ワシントンD.C.2



 連想ゲームで「ワシントン」というお題が出たら、おそらく大和田獏は真っ先にホワイトハウスと答えるであろう。
 そんなホワイトハウスに、今日オレは行く。もしかしたらホワイトハウスよりも、日本語に直して「白い家」と言った方が日本人のみなさんにはわかり易いかもしれない。簡単に説明しておくと、ホワイトハウスとはアメリカ合衆国の大統領が
モニカルインスキーとチョメチョメした場所である。まあ言ってみれば歌舞伎町にある、大人が行くようなお店の仲間なのだ。
 オレはもう成人しているし、大学も卒業した。ということは立派な大人である。いや、たしかに
貯蓄が0の上に無職で放浪中ということを考えれば、立派とは呼べないかもしれない。というか呼べない。しかし大人なのは間違いない。なぜなら20歳以上は大人だと民法第3条に書いてあるからだ。だから、大人なオレはホワイトハウスに行ってもいいはずである。
 ホワイトハウスは大統領や大統領の友達、または大統領とチョメチョメする相手しか入れないと思ったら大間違いである。オレはそう思っていたので大間違いだった。ホワイトハウスにはホワイトハウスツアーなるものが組まれていて、なんと成人していなくても家の中をガイドつきで見て回れるというのだ。まあ本来ならばホワイトハウスといえども人の家、普通にインターホンを押して訪ねて行きたいものだが、大統領くらいのスターになると
たとえMr.ちんでも訪問するのは難しいだろうから、この際いた仕方ない。しかもこのツアーは無料である。これなら歌舞伎町の店に行くよりもずっと経済的ではないか。

 そのホワイトハウスツアーに参加するためには、ホワイトハウスの近くにあるビジターセンターというところを訪れて申しこまなければいけないようだ。少々面倒くさいが、
無料でチョメチョメのためならエンヤコラだ。ビジターセンターに入ると、入り口でメガネをかけた人の良さそうなばあさんが受付けをしていた。おそらく大統領家訪問のアポは、あそこでとるのだろう。



「すいません人の良さそうなおばあさん」


「あーら、なにかしら?」


「今日のホワイトハウスツアーに参加したいんですが。」


「ダメよ。」


「あ、そうですか。・・・って全然人良くないですね!!イヤイヤ駄目じゃなくて!!なんでですか!!!」


「残念ねえ。今ツアーやってないのよ。例のテロの影響で。」



ズガーン!!!


ここもかよ!!!・・・じゃあオレのチョメチョメはどうなるんだよ!!!
 せっかくはるばる日本から来たのに家に入れてくれないとは。普通スミスさんでもジョンソンさんでも、客がわざわざ訪ねて来たらせめて挨拶くらいはするだろう。大統領のくせして、ブッシュはなんという器量の小さい男であろうか。こうなったら「区役所の方からきました」と言って無理矢理進入しようか。オレの家は杉並区役所の近くにあるのでウソをついていることにはならない。・・・。
もちろんそんな勇気は無い。
 しょうがない。ブッシュのお宅拝見は諦めるとして、では空いた時間は何しようか。ふと受付け横のホールを見ると、なにやら音楽室の
バッハのような髪型をしたおっさんが演説をしており、大勢のアメリカ人がそれに聞き入っている。あれは誰だろう?バッハだろうか??



「すいません、人の良さそうなおばあさん。」


「なんザマス?」


「あそこで話をしている人は誰ですか?」


「あー、あれね。ふふふ。あなた運がいいわね。」


「なんすか?」



吊りあがったメガネの人の良さそうなばあさんは、突然しおれた胸を張り、自信満々に言い放った。



「ヒー・イズ・トーマスジェファーソン!!」


「へえ。・・・まじで!?本当にジェファーソンなの??」


「もちろんよ。キミも話を聞くといいわ。」



 なんと演説をしているのは、トーマスジェファーソンだという。もちろん、オレも聴衆の中に混じって彼の話を聞くことにした。トーマスの話し方は実にこ慣れており、いかにも演説巧者といった雰囲気をかもし出している。
 オレもアメリカ人と一緒にしばらくジェファーソンの話を聞いていたのだが、よく考えたら何を言っているのか全くわからない。そしてもちろん
トーマスジェファーソンが誰なのかも全然知らん。これでは、コギャルが瀬戸内寂聴の説法を聞いているようなもんである。とりあえず、トーマスについて何か情報を得なければならない。ホワイトハウスビジターセンターで弁舌を振るっているということは、多分大統領関係者であろう。
 しばらく地球の歩き方の情報ページを読んでいると、トーマスジェファーソンの記事はすぐに見つかった。それによると、なんと彼はアメリカ合衆国第3代大統領、独立宣言をした
アメリカ民主主義の父と呼ばれている人物らしい。
・・・
お、大物だ。
 これは物凄い大物である。今までオレが出会った有名人の中では、
毒蝮三太夫に次ぐ大物だ。どうりで演説に長けているはずだ。本物の大統領経験者に会える機会など、ドリフのコントで「志村、後ろ!後ろ!」と叫んだことのある人間に会うのと同じくらい滅多に無い。
 しかし引退しても変わらないあの演説っぷりは実に見事なものである。なにしろ第3代大統領、もう相当な年であろう。地球の歩き方を見てみると、1743年生まれと書いてある。1743年・・・ということは、もうかれこれ260歳くらいである。いやー、あのしっかりした喋り方を見てるととても200歳代とは思えない。
せいぜい180歳くらいにしか見えない。




・・・。




ババアに騙されてる?

おかしい。260歳であんなに声に張りがあるのは絶対におかしい。これはあのばあさんにいいようにからかわれているか、ばあさんにお迎えが来ているのかのどちらかだろう。オレは再び人の悪そうなばあさんのところへ戻った。



「すいません人の悪そうなおばあさん。」


「どうしたの?」


「彼はトーマスジェファーソンですか?」


「そうよ。」


「・・・。」



次の英語が出てこねえ(涙)。
日本語でならこのばあさんの不埒な悪行三昧を暴く数々のセリフが出てくるのだが、それを英語で言うとなると、
うちの両親にPRIDEとK−1とプロレスの違いを説明するくらい難しい。しかしこのまま引き下がっては男がすたる。もう今まででかなりすたっている為、これ以上すたったら男が無くなる。オレは幸いにして暇そうな、というかオレしか遊び相手がいなさそうなばあさんに2,3分のインターバルをもらい、IQ50000の頭脳を総動員して考えに考え抜いた。



「えーと、アイ シンク ヒー ダイド。(彼は死んだと思うんですけど。)」


「・・・。」


「・・・。」


「イエース。ヒーダイド ロングロング アゴー!(そうよ。彼は長い長いアゴに死んだのよ!じゃなくてとっくの昔に死んだのよ!!)アーーッハッハッハ!!!オーーッホッホッホ!!」


「やっぱり!!アーッハッハハ!」


「オーッホッホッホッホ!!!!!」


「・・・。」




今すぐ迎えに来させてやろうかこのババア!!!!

おのれ〜。汚れを知らないいたいけな少年をもてあそびやがって・・・。ああ、しかし何も反論できないのが悲しい。これだけおちょくられても、無意識に老人をいたわってしまうオレの慈愛の心、優しさを恨む。
 もちろんオレはニセトーマスなどに興味はなかったので、すぐにビジターセンターを後にした。しかし他のアメリカ人はよくニセの演説なんかにあんな熱心に聞き入っているものだ。いや、もしかしたら彼らも全員ばあさんに騙されて本物だと思い込んでいるのかもしれない。もしくは全員
仕掛け人とか。ある意味それだけ大掛かりに騙されたと考えればこちらも本望だ。

 その後も午後は○○(まるまる)、ワシントンの観光に使った。何しろここにはとにかく観光ポイントが多い。例えばワシントン記念塔。これはホワイトハウスの前の公園に立つ細長いタワーで、ワシントンD.C.で1番高い建造物である。よってこの塔に登れば首都の街が360度に渡って一望できるという、ワシントン観光の目玉なのだ。ただし、テロの影響で今は入れない。他には例えばFBI。アメリカ映画の刑事ものを見れば5本に4本は必ず名前が出てくる、FBI=連邦捜査局の本部がここワシントンににあるのだ。ここも一部観光客に開放されており、過去の有名な犯罪の資料、職員によるピストルの発射実演などが見られるのだ。
ただし、テロの影響で今は入れない。

・・・。



イジメか?

どこもかしこも入れない入れない入れない!くそ。
ヤンキーの大学受験でも運がよけりゃ1箇所くらい入れるぞ!!!
 厳しいが、これがこの時期のアメリカの観光事情だということだろう。よく考えてみれば、今この国はアフガニスタンと
戦争中である。目下戦争中の国をこうして普通に観光旅行をしているというのも、無神経であり常識外れなことだ。

 といことで、仕方なくしばらくその他の
公園や銅像などの観光(号泣)をしながらぶらぶらと過ごし、夕方になった。ここで本来ならば食事後ユースホステルに帰るわけだが、オレはある一つの希望があった。
 たまにはホテルに泊まる??
 元々この旅には、9・11のテロによるアメリカ各都市への影響、人々の生活の変化を探るという目的の他に、普段の暮らしでは味わえない様々な異文化体験をするという目的もある。
・・・。
自分で言っててあまりのウソっぷりに腹が立ってくるが、とにかくそういう目的がウソでもある。ということで、毎日同じようなところに泊まらずに、1度くらいアメリカ大都市のホテル体験をするのもよいのではないかという思いに至ったわけだ。
 オレは地球の歩き方のホテルリストを見て、いい体験になりそうな所を探した。そして見つけたのが、「ウィラードインターコンチネンタル」というホテルだ。「江戸幕府が日米修好条約批准書交換の為に派遣した遣米使節団も宿泊したホテル」と書いてある。この説明文の
内容はともかく、漢字の多さからしてさぞかし名のあるホテルなのだろう。名のあるホテルということは、それなりに値段もかかるだろうが、経験は金には換えられない。

 そのなんたらかんたらホテルは、ホワイトハウスのすぐ近くにあった。一見していかにも要人が利用しそうなホテルである。入り口付近には、
「年収5000万以下の人間こっから先はいんなよ。」といった空気が漂っている。しかしオレは躊躇しない。今夜はここに泊まることに決めたのだ。フロントの品の良さそうなねえさんに早速部屋の交渉をする。



「すいません、品の良さそうなおねえさん。」


「いらっしゃいませ。ギョッ。ようこそお越しくださいました。」



 品の良さそうなねえさんは、いきなりオレの服装を見てギョッという表情に変わった。客に対してなんという失礼なホテルウーマンであろうか。高そうなスーツを着ていれば金を持っているというわけでもなかろう。たとえどんなに安っぽい服装でも、もしかしたら事業の成功者で大金持ちということもある。服装がみすぼらしければ金を持っていないという判断は、決して全てに当てはまることではないということを、この失礼なおねえさんには学んでもらいたい。
まあ今回の場合は当てはまるのだが。



「今日ここに泊まりたいんですけど。」


ギョッ。・・・左様でございますか。どのようなお部屋をご用意いたしましょうか??」


「えーと、一番安い部屋で一晩いくらくらいですかね・・・?」


「はい、最もお値段の低いお部屋で、一泊500ドルになります。」


「そうですか。じゃあそこで・・・。・・・。・・・。
えーと、1ドル130円だから500ドルは6万5千円・・・。ちょっと待ってください。


「いかがいたしましょうか。」


「ふーん500ドルかあ。ま、まあその部屋でもいいんだけどお。他の部屋にも興味あるなー僕。じゃあ一番高い部屋っていくらくらいかなお嬢さん??」


「高い部屋・・ですか?・・・えーと、ロイヤルスイートですと、4000ドルになりますが。」


「・・・。」


「・・・。」


「なるほど!わかりました。じゃあ
それを踏まえて、泊まるかどうか検討してみます。ちょっと今アレなんで、また後で来ますね。」


「お待ちしてます・・・クスッ。」


「!!」









わ、笑われた。

客なのにホテルのフロントに笑われた。














今すぐ社長の丹波哲郎を呼んでこい!!






ああそうさ。オレはもう客じゃないさ。また後で来ますねと言ったけど、本当に後で来る可能性は
あんたの想像通りマイナス100%だよ!!オレは年収、いや月収も無いよ!!!収入自体無いよ!!!なんだよ。どうせ「あーらなにこの汚らしい東洋人?結婚したくない男の条件を全て兼ね備えてそうねぇ。」とか思ってるんだろうが!!全てってことはないぞ!!!オレはハゲてない!!!ハゲては!!!!

 とりあえずオレは、再びユースホステルへ戻った。ルームメイトはアメリカ、フランス、インドネシア、色々な国籍の旅人達だ。同じ屋根の下こうしてたくさんの旅仲間達と交流を深められるというのは、まさにユースホステルでしか体験できないことである。高級なホテルなんかに泊まるより、ずっと勉強になるし、自分のためになる。これからも、オレは敢えてこうした交流を大事にした、旅人の安宿というものを
大切にしていたい。











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