〜中国の美しい景色1〜





 ディズニーランドから帰ったオレは、香港での予定を全て消化して翌日中国へ戻ることになった。いったん地下鉄で香港を出て広州に渡り、汽車站で
何時間か時間を潰してそれから夜行バスで移動である。


 …………。


 
いやじゃ〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっっ(号泣)!!!!!

 
昨日までは正真正銘の夢の国にいたのにっ!!! また今日から中華思想ネチョ〜ン地獄が始まるのかっっ!!!! 夢よ覚めないでっっ(涙)!!! 香港ディズニーランドは、我々に現実の厳しさを教えるために作られたのかっ!!!! 逆説的な目的かっっ(号泣)!!!!

 やっぱり、
夢は夢なんだ。香港は、マッチ売りの少女が点火した炎に包まれた、幻の街だったんだ。炎の中の街だったんだ。
 だから、香港映画の主役はいつもアチャーアチャー言ってるんだな。炎の中の街だから。きっとブルースリーも、熱気溢れる香港から出て中国で映画を撮ることになったら、
「サムーーーーッッ!!! サムーーーーーッッッ!!!!」と叫びながら冷めた雰囲気で敵を倒したことだろう。
 しかし、戻りたくないと言いながらオレわざわざ中国の
3ヶ月ビザ手に入れてるんだよな……。まだまだ全然帰国日を気にせずに中国にいられるぞ。来年までいられるんだけど。もしかして、「イヤよイヤよも好きのうち」と言うように、文句を言いながらも日夜ネチョネチョしていたことによりオレも汚水汚しぶき汚体液のねっちょん地獄にいつの間にか快感を感じてしまっているのではないだろうか? もう中国の不潔さも一切気にならなくなっているのではないだろうか??

 ということで、香港から広州まで移動すると夕食のため食堂に入った。だいたい中国ではどこの店でもそうだが、ここも席に着いた途端近くの客が「カーーペッ!!!!」と床に汚体液を吐き出し、
オレは絶望的な気分になった。
 やっぱり、中国の不潔さには
慣れない。というより、こんなもんに慣れてしまったら人として終わりなんだよっっ!!!!
 う〜気持ち悪い。出たいこんな食堂。でも、どうせどこ行ったって同じだし……。空腹のまま夜行バスに乗ったら酔って大変なことになるし……。オレも吐いちゃうもん。ねちょねちょを
提供する方になっちゃうもん。

 とりあえずおまじないを唱えバリアを張って、近隣の床にある汚物とオレのテーブルは完全に別の、
遮断された空間にあるというイメージを固く脳内に作った。今言うことじゃないかもしれないけど、なんで中国と香港は同じ国なんだろう。
 オレのバリアは店員だけは入れるようになっているので、空間の壁を越えてにいちゃんがオレの超清潔空間まで料理を運んで来てくれた。本日のオーダーは紅焼茄子だ。




 茄子が大好物なので毎日茄子料理ばっかり食べているが、食堂の清潔さはともかく味に関しては一度も外れたことがない。しかもここは「食は広州にあり」と言われるまさにその広州。中国が香港に勝っているのは国土の広さと
自己主張の理由の意味不明さだけだと思っていたが、もうひとつあった。この中華料理だ。香港と比べて中国本土は物価が半分以下なのにこの絶品ぶり。時々中国では食堂でメシを食った客が何十人もバタバタ死ぬような事件がよくあるが(なんであるんだよ)死にさえしなければ料理は中国側の完全勝利だ。
 ある種こうして本場の中華料理を食っている時というのは、ディズニーランドにいた時とさほど変わらない、
夢の世界にいる気分になれる。ドナルドの彼女・アヒルのデイジーちゃんと遊んでいた頃のウキウキした気持ち、そんな気持ちに食事時に限っては中国でもなれるのだ。

 茄子を平らげてまだ時間があったので、せっかく広州にいるんだしとオレはレストランのハシゴをして軽くもう一膳食べることにした。次はデパートの中にある、ややこじゃれたレストランだ。さあ、素敵な中華料理で今一度夢の世界へ連れて行ってもらおうではないか。ということでメニューを見ると、正確には理解出来ないが漢字の字面でなんだかちょっと気になる名前の料理があったので、それを頼んでみた。

 するとこんなのが出て来た。









グヮッグヮッ





 いや〜、さすが中華料理、食事の間はデイジーちゃんと遊んでいたウキウキの気分になれるよねって
これデイジーちゃんの頭じゃねえかっっ!!! 昨日夢の国でキャピキャピしていたデイジーちゃんがっっ(涙)!!! 頭だけになっているっ!!!! あんなに可愛かったデイジーちゃんがあああっっっ(号泣)!!!!


 
ああ、昨日まであんなに元気だったダックの彼女がこんな変わり果てた姿に……(号泣)。大体、どうやって食べるんだこれはっ。食べるところあるのかよっっ。
 ちょっとお箸でくちばしを開いてみましょうかね……、おおおっ、なんかベロが……














 あ、あが、あがががが……グヮッ……(号泣)






 
食えるわけねーだろっっ!!! 心優しいデイジーちゃんをっっ(涙)!!!! 寂しいオレと遊んでくれた、天使のようなデイジーちゃんを!!!! ドナルドだったとしても食えんわっっ!!!!! ドナルドとデイジーちゃんの子供だと思っても食えんわっ!!!!


 これじゃあ、
ディズニーランドが中国に出来ることは永久に無いよな。ドナルドとデイジーちゃん、そしてその家族や親類は全員見つかったら食われるんだぜ??? ミッキーやミニーだって、中国の食堂でありがちな殺鼠剤入りの料理を食べたら1発だ。 ※グーグルで「殺鼠剤 中国」で検索してみましょう。
 それに中国では犬や猫も平気で食べるので、グーフィーとかグーフィーの隣にいる名前がわからん黄色い犬とかもやられる。
おしゃれキャットのマリーちゃんも食材になってしまうではないか。無事なのはせいぜい眠れる森の美女くらいだ。でも、眠れる森の美女はたとえ食われなくても根本的に中国には行きたくないに違いない。そう考えるとやっぱり、ディズニーキャラクターたちにとっては香港が中国に近づける限界の場所だったんだな……

 もちろん、アヒルの頭料理は
丸ごと残した。そして弔った。

 そんなこんなである意味今日もデイジーちゃん(頭部)と遊んでいたら時間が過ぎ、夜の8時半、バスの時間になった。到着は明日の朝だが、今回は寝台バスではなく、ノーマルバスだ。このごく普通のバスで、座席に座ったまま夜を明かすのだ。
人間の体は、座ったままひと晩寝られるようにはできていないにもかかわらず。
 一昨日の夜は香港で夢の国に思いを馳せながらワクワクしてベットに横になったもんだ。なんでそのたった2日後なのにこんなに苦しい夜なんだ。
この2日の間にオレが一体どんな罪を犯したというんだっ!!! 正当な理由もなしに外国人旅行者をこんな理不尽に扱ってこの国際社会が許すと思っているのかっっ!!!! 報道を管理しているつもりだろうが、今はオレのような有志が公安の目も恐れずにネットを通じて中国の弾圧を世界に配信出来るんだよっっ!!!!
 
体が痛い〜〜。

 そして夜行バスで10時間(いちいち長いんだよっ)。翌朝心身共に衰弱し血圧を20まで下げながら到着したのは……、
桂林だ。
 中国に来たら、やはりここは訪れねば。香港ディズニーランドに対抗して、この桂林は大自然のテーマパーク。この国での基本的なパターンとして、中国人が「よし、ここを観光地にするアルよ!」と考えて人工的に何かを作ると
まず間違いなく失敗するが、ほったらかしにされている自然は逆に十分見る価値があるのだ。失敗例
 というわけで、到着早々桂林から乗り合いバスに乗り2時間半、陽朔(ヤンショウ)という町にやって来た。都市化している桂林の街よりも陽朔は景勝地の真っ只中であり、バックパッカーが多く物価も安いのであるザーマス。

 バスを降りて町の中心へ向かうと途中の景色は……









 
グラッシアスッ!!!!!

 
これこそイメージの中の中国!! 水墨画!! 水墨画の景色じゃないかっ!!!

 でもまあ
そういうのは明日にして、呼び込みのねえさんに誘われて外国人向けのドミトリーにチェックインすると、とりあえずオレは寝た。夜行バスなんて人間の乗る物じゃねーんだよっ。中国全土に日本の新幹線を導入しろっっ!!!

 さて、やはり中国は日頃の行いが悪いため天気がなかなか良くならず、2日間も待たされてようやく3日目に晴れ間を見てオレは川を上ったり下ったりするツアーに申し込んだ。
 まずはバスで興坪(シンピン)という小さな村へ向かい、船着場から小舟に乗って川を上ったり下ったりするのだ。平均所得以上の一般の観光客の皆様は、桂林の街からここまでフェリーに乗ってずっと川を下って来るこれすなわち「漓江下り」と呼ばれるのだが、我々貧困層のバックパッカーは一定の流域を小舟で上って下って行って帰って右往左往するのである。この格安右往左往ツアーは、いわゆる派遣村で提供される炊き出しのような、弱者救済のためのありがたい存在だ。

 だがそれでも、ちゃんと見どころ付近で右往左往するためきっちり川沿いの風景は堪能出来る。








 お〜〜〜〜〜っ。














 
おおお〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ。



 
邪魔。

 こいつらは記念撮影中の中国人であるが、3バカは小舟の正面、
ツアー参加者が一番良い景色を見られるポジションを占領して、全員の視界を遮って堂々と記念撮影をしている。自分の記念写真さえ手に入れられれば、他の旅行者が景色が見られなくても全く構わないというその開き直りぶり。堂々としていて立派だ。さすが世界の中心であり、選ばれた民族である「中華思想」の体現者・漢民族の皆さん。
 でも、こういう人たちに油田を盗られてお金をせびり続けられても我が国の代表者の方々は
良心に基づいた話し合いで解決しようとしているんだから、国民として感心するやら情けないやら。
 …………。
 
ああっっ!! どうしてでしょう。ベトナムから中国入りした時は感動と新鮮な気持ちが勝っていたのに、香港から再び入国するとなんだか中国に対する憎しみの気持ちしか沸いてこないわ。なぜなのかしら。外国に対して文句を言うことなんて滅多に無い私なのに(号泣)。

 尚、右往左往の途中では桂林から下って来た観光用フェリーと何度もすれ違ったのだが、ほとんどの船では後部のキッチンでコックが
「ゴーーーージャーーー! ジャージャー!! ガゴンガゴンガゴン!!!」炎を巻き上げて鍋を振っていた。水の上でも本格中華を作るその執念は凄いが、気をつけないとそのうち船ごと炎上するのではないだろうか? とはいえ、炎に包まれた船が川を疾走する姿も映画「レッドクリフ」を彷彿とさせ中国らしくて良いかもしれない。
 案外実際の赤壁の戦いも、本当は火計ではなく、曹操の専属料理人が
「ゴーーーージャーーー! ジャージャー!! ガゴンガゴンガゴン!!!」と派手に腕を振るっていたらそのまま船に引火して船団が焼け尽くされてたりして。そんな理由で全滅ではあまりにカッコ悪いので、一応歴史書に記す時は敵の火計にやられたことにしたのかも。

 川下りはあっさり終わったが、オレはその後も自転車を借りて適当に田舎の方に突入してみた。案外、川よりも普通の村々の方が景色がやばかったりする。 ※やばい=「凄い」という意味のギャル語







 こんな風景をオレはとても美しいと思えるが、この村に住んで何十年と同じ物を見ている人にとってこれはもはや日常の物であり、こんなにも麗しい山々なのに、それに対して大した感情は抱いていないのではないだろうか。人間は、どんなに美しい物にでも慣れてしまうんだ。そう考えると、美人てだけじゃ結婚出来ないよな……(何の話をしてるんだ)。

 …………。

 でも、ずっと桂林の景色を見ていると慣れてしまうけど、順番に他の町、他の国の美しい自然を観光して、そしてまたここに帰って来るときっと今と同じように桂林に心を奪われると思う。だから、同じように女性と付き合う時だって一番いいのは、うまく何人も彼女を作ってそれぞれと少しずつ会うようにして飽きないようにローテーションで……、
なんて悪いことを考える男がいたら、誠実なことで有名なこのオレが許さねえぞっっっ!!! そんなことを言う悪辣で人でなしのちんぴらは、一人の女性に誠心誠意尽くすことで評判のオレが懲らしめてやるからなっっっ!!!! 覚えとけこの野郎がっっ!!!!! だしゃ〜〜〜〜っっ!!!!

 まったく、女性を不快にさせることを言うような人間は、同じ男として恥ずかしいぜ。


 わおっ。







 これなんか、ほとんど自然を利用した盆栽ではないか。その辺の山の頂上に仙人でも浮いていそうである。もし仙人を見つけたらオレも弟子入りして、「浮気をしても絶対にバレない術」を伝授してもらおう〜〜っと。
なんて考えているろくでなしは、交際した女性を必ず幸せにするという風評のオレがただじゃおかねえぞっっっ!!!! そんな放蕩者は愛するたった一人の女性のために全てを捧げる真の男だと断定されているオレがコテンパンにしてやるっっ!!!! そんな男は男として生きる価値がないんだよっっ!!! 男性用ブラジャーでも買いやがれっ!!! 着けやがれっっ!!!! はいりゃ〜〜〜〜っっ!!!!


 まあせっかく桂林まで来てそんな
オレとは関係ない悪党のことを考えていると時間がもったいないのでサイクリングに集中したいが、それにしてもたとえ道々で中国人の我が侭やねちょねちょ地獄に苦しまされようとも、ある日こんな壮大美麗な大自然を出されてしまうと、中国に対する見方も180度変わってくるような気がするがそれはあくまで気のせいでそう簡単には不信感は消えないよ。
 
そんな感じで桂林の観光は終わり。








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