〜盲腸とロングラブレター3〜

柳瀬くんによる手術。
薬がない。
消毒は職員室にあったウイスキーでかろうじて行っているのだが・・・
腹をカッターで切り裂くという大手術にもかかわらず、麻酔が無い。
これは痛いとかいうレベルの問題ではないのではないだろうか?
内臓に達する傷をつけるのである。
経験者として語るが、手術が終わった直後は大きく息を吸うだけでも痛かった。ふと油断して腹に力を入れてしまうと、声にならない呻き声が出る。
術後3日くらいまでそうだった。
これが麻酔なしで手術をするとなるとどうなるのか?
あまりの痛さで呼吸をすることも出来ないのではないか?





しかし手術は続けられている。

翔は小学生である。
想像するだけで私の盲腸の傷も痛んでくるような気がする。
本人は言うまでもないことだが、周りでこの手術を見ている友人もさぞかし辛いのではないだろうか。
そんな友人の中でも、特に翔と親しいヒロインの咲子がついに叫び出す。

「誰か!誰か少しでも痛みを止める方法を知らないのっ!?今からでも・・・少しでも!」

友達が苦しんでいる姿をじっと見ているのは耐えられないのであろう。
そう、少しでも、ほんの少しでも痛みを和らげる手段はないのだろうか?
だが周りにいるのはみな小学生である。
そんな医学的知識などあろうはずもない。
そもそも砂漠の真ん中に放り出された彼らには薬など手に入れることは不可能なのだ。
やはり翔はこのまま痛みに耐えるしかないのか?
そして咲子はそれを見守るしか・・・?


その時だった。










メガネくん「咲子さん、学校にスズランの花がありますかっ!?スズランの汁が麻酔薬になります!!」






なんだって?
スズランの汁が麻酔の代わりに・・・?
メガネくん!!それは本当か!?
偉い!よく見つけた!偉いぞ!!メガネくん!!!
それを腹を切り裂く前に発見していたらもっと偉かったぞ!!
・・・っていうか手術前にもうちょっと時間とって調べたらよかったんじゃないのか?
まあとにかく!
スズランの花をとってくればいいってことだね?
素晴らしい発見だ。
それを聞いた咲子はすかさず飛び出してゆく。
友達として、当然のことだ。
しかしここに大きな問題があった。
ここは新校舎。
スズランがあるのは旧校舎の脇。
もちろん新校舎と旧校舎の距離などさほど離れていない。

だが。

今旧校舎は、翔と敵対する悪い小学生・大友君とその仲間達によって占拠されているのだ。
彼らがすんなりスズランを渡してくれるとは思えない。
小学生とはいえ奴等は石で作った斧で武装し、人殺しすら平気でする連中なのだ。
そんな危険なところへ行こうとする咲子を追いかけ思いとどまらせようとする周りの少女達。
だが彼女は聞く耳を持たない。
今の咲子には翔の痛みを和らげることしか頭にないのだ。
そして彼女を止めることは出来ないと悟った3人の少女達は、意を決して咲子と行動を供にする。







苦しむ翔を助けるために自分の身を省みず危険な場所に向かう4人の少女達。美しい。
なんと美しい友情ではないか。
今の世の中で、他人のためにここまでできる人間がいるだろうか?
全力疾走で旧校舎に向かった4人は、なんとかスズランのある花壇にたどり着く。そして、急いで花を摘む少女達。
スズランは手に入れた。
後はこれを持って一刻も早く翔のもとへ戻らなければ・・・。












しかし!














悪い小学生「なぜスズランなんか盗みに来たっ!?」




でたっ!!
大友派の悪い小学生達!!
見つかってしまったぞ!
逃げろ!!
逃げるんだ少女達!!

戦っても彼らに勝てる訳が無い少女達は、必死で逃げる。
スズランを持って一目散で新校舎へ駆ける4人。
追いかける悪い小学生。
しかし走る速さで女子生徒が男子生徒にかなうはずがない。
次第に咲子達と男子生徒の距離が縮まってくる。
ああっ、追いつかれる・・・!

果たして彼女達は無事新校舎に辿りつけるのか?
4人の少女の運命は??
頼む、逃げ切ってくれ!
全員
無事に帰ってきてくれ!!!













あ。












1人死亡。
























2人死亡。





3人死亡。





















やはり来ないほうがよかったのでは(泣)?







一人の少年の痛みを和らげるために、すでに3人死んでるんですけど・・・。
少女達、その手に持ったスズラン、

自分の痛みを和らげる為に使った方がいいと思うぞ。













そして・・・。
3人の尊い命は失われたが、なんとか咲子だけは追手を逃れることができた。
命からがら新校舎に駆け込む咲子。








咲子
「翔ちゃん!!ス、スズランを!!」






3人の犠牲。
それはあまりにも大きい。
みな、まだ小学生なのである・・・。
ただ、彼女達は多少なりとも覚悟をしていたのではなかろうか。
咲子の後を追いかけていったにしても、あくまでも少女達が自分の判断でスズランを採りに行ったのだ。
旧校舎は危険だと承知の上で。
みんなそうまでして翔を助けたかったのだ。
たとえ自分の命を失っても、少しでも翔の痛みが軽くなればと・・・。
なんて・・・友情ってなんて素晴らしいんだ!!
ああ、なんだか目頭が熱くなって・・・

翔よ。
キミはなんて幸せな男なんだ。
4人の女の子が命を張ってまでキミのために尽くしてくれるとは。
このスズランは3人の少女の命である。
とてつもない重みを持ったスズラン。
この花を、なんとしても翔のために役立てなければならない。
頼むぞ、柳瀬くん。頼むぞ、メガネくん!
スズランを翔のために使ってくれ!!
3人の死を無駄にしないためにも!!









































小学生A「スズランはもういらなくなったんだっ!!」


小学生B「無事に終わったんだ!!」


















手術終わったからもうスズランいらないって。













































3人無駄死に決定。















咲子心の怒り。














ま、なんにせよ無事終わってよかったね。





おわり。

























最後に作者よりコメント

今回漂流教室をネタにしてここまで書いてきたわけですが、このマンガ自体はとても素晴らしい作品です。大好きなマンガです。ところどころこういったツッコミどころはあるものの、翔達ががんばって生きて行く姿や、突然姿を消した息子を探す翔のお母さんの愛情には本当に心から感動せずにはいられません。もともとベストセラーになったマンガですからあらためてここで言う必要もないですが、是非みなさんも一度通して読んでみることをおすすめします。










最後の最後にもう一言。



















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おまえ絶対教師だろ?










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