英会話







英会話スクールの教室に入ってくるみつる。

みつる:「こんにちはー。」

講師:「あー君かー。新しく入ったのは。」

みつる:「はい。あれ?他の生徒さんは?僕だけですか?」

講師:「ああ。ここは今流行りの少人数制を採用しているからな。」

みつる:「そうですか。」

講師:「だから講師は私一人だけだ。」

みつる:「講師が少人数かよ!」

講師:「大丈夫。ちゃんと生徒も年一人くらいしか入ってこないから。」

みつる:「それ別に少人数制だからじゃないでしょう!?ホントに大丈夫なのかよこのスクール?」

講師:「おい!言葉の使い方に気をつけろよ!」

みつる:「あ、すいません。つい。」

講師:「この場合Lは発音しないからスクールじゃなくてスクーゥだ。」

みつる:「そこかよ!!!」

講師:「じゃあ席について。君いくつかな?」

みつる:「22です」

講師:「そうか、オレが24だから2つしか違わないな。でも授業の時は先生と生徒だからな。口の利き方に気をつけたまえよ。」

みつる:「はい。すいません。」

講師:「さあじゃあ早速始めるぞ。いつも最初は英語の挨拶からはじめる。挨拶くらいできるな?」

みつる:「まあそれくらいは」

講師:「はい、じゃあ立って。グッドモーニング!」

みつる:「グッドモーニング!」

講師:「ハウ・・・ハウドゥーユードゥ?」

みつる:「ファインサンキュー、アンドユー?」

講師:「アイム、ファ・・アーイム・・・アー、えーっと」講師、教科書をちらっと見る。

講師:「アイムファインサンキュー!」

みつる:「先生!あんた先生でしょ!!大丈夫なの!?」

講師:「シャーラップ!!ちょっとど忘れしてただけだ。なんだかんだいってもう日本暮らしが長くなっちゃったからな」

みつる:「あーそうなんですか。どのくらいになるんですか?」

講師:「もう24年になるかな」

みつる:「永住してるじゃん!!永住!!」

講師:「もういいから授業に入るぞ。」

みつる:「あの、先生」

講師:「なんだ」

みつる:「パンフレットに留学制度ありって書いてあったんですけど。」

講師:「ああ。世界5都市の学校と提携している。」

みつる:「凄い!どこがあるんですか?」

講師:「ペキン・ハルピン・チンタオ・アンシャン・フーシュンだ。」

みつる:「全部中国かよ!!!意味あんのかそれ!!おかしいだろ!!!」

講師:「ま、そう思うのも当然だと思うよ。実際今まで留学行った奴も行く前まではみんなそう言ってた。」

みつる:「え?そうなんですか?」

講師:「ああ。でもなー、留学から帰って来た生徒は、今じゃ全員が立派な整体師として働いてるんだぞ」

みつる:「なんの留学なんだよ!!!!どんな学校と提携してるんだ!!」

講師:「黒龍江中医薬大学整体治療室とか山東中医薬大学・・・」

みつる:「うるさいよ!!英会話と関係ねーだろ!!」

講師:「別に語学留学とは言ってないだろう。」

みつる:「ここはなんのスクールなんだよ・・・」

講師:「無駄話はこのくらいにして授業にはいるぞ。」

みつる:「そうしてください。」

講師:「 じゃあ今日は旅の日常会話をやります。」

みつる:「おっ。実用的でいいですねー。」

講師:「旅先でよく使う日常会話です。まず最初は、『すみません。盲腸の傷が開いて膿んできてるんですけど』だ」

みつる:「どんな日常なんだよ!!そんな会話しないだろ!普通!!」

講師:「そうか?じゃあ次。『禁煙なんて簡単さ。俺はもう何度もやった。』」

みつる:「だから!・・・?う、うまいこと言いますねー。」

講師:「そうだろーそうだろー。外国じゃあユーモアのひとつも言えないようじゃ一人前のビジネスマンとして認められないんだぞ。」

みつる:「へえーっ。それは勉強になります。」

講師:「まあ実際これを使う時はちゃんと英語で言わなければいけないんだが。」

みつる:「はい。」

講師:「じゃあ次の会話いってみようか」

みつる:「先生!!!!英語に直せよ!!!!何の授業なんだよ!!!!」

講師:「お前なに興奮してるんだよ。」

みつる:「英会話の授業でしょ!!!!?なんで日本語しか教えてくれないんですか!!」

講師:「おまえなー・・・。いいか、先生と生徒っていうのは一方的な関係じゃない。お互い協力しあってやっていくものだ。違うか?」

みつる:「そうですけど・・・。」

講師:「オレは日本語で君に例文を教えた。後はそれを君が自分で英語に訳す。それでフィフティーフィフティーだろう。」

みつる:「いやおかしいですって。それ。・・・実は先生わかんないんじゃないの?」

講師:「何を言ってるんだ!!先生を見くびるんじゃないぞ!」

みつる:「だって僕に訳させるなんておかしいよ。自分がわからないからなんじゃないの?」

講師:「わかるに決まってるだろう」

みつる:「ホント?なんか怪しいなあ。」

講師:「わかった。じゃあ次の会話は先生が訳す。これで文句ないだろう。」

みつる:「出来るんですか・・・?ま、当然か。先生だもんね。わかりました。お願いします。」

講師:「完璧に訳してやるからな。見てろよ!・・・はい、次の例文は『こんにちは。私の名前はたけしです。』」

みつる:「ちょっとまて!!!!!!誰でもわかるよそんなもん!!!!!!あんたホントは英語話せないんでしょう!!!」

講師:「失礼だな君は!!!喋れるって言ってるだろう!」

みつる:「じゃあなんか資格とか持ってるんですか?それ聞かないと安心できないんですけど。」

講師:「持ってるさ。」

みつる:「なんですか?」

講師:「英検だ。」

みつる:「いや英検って。英検のなんですか。」

講師:「なに?あ、そうか。英検は・・・たしかAクラスだ。」

みつる:「あんた受けたことないだろう!!」

講師:「いや、もう昔のことだから忘れちゃったんだよ!」

みつる:「じゃあTOEICは?」

講師:「ト、トイク・・・??あー、トイクは受けてない。」

みつる:「なんで受けてないんですか!英検よりTOEICの方がメジャーじゃないですか!」

講師:「あー、だってトイクの日ってわかり辛いんだもん。」

みつる:「わかり辛い??なんでですか!別にわかり辛くないですよ!」

講師:「だって10月の第2月曜日とかになってるんだぞ。なんかわかりにくいだろう。去年まではちゃんと10月10日がトイクの日って決まってたのに・・・」

みつる:「そりゃ体育の日だよ!!!!!!!!!!!もうわかった!あんたなんにも英語話せないだろう!!」

講師、みつるに思いっきりビンタ。

講師:「いい加減にしろ!!!!!!!!!!!!」

みつる:「いてーーーーーっ!!!」

講師:「・・・」

みつる:「・・・」

講師:「・・・人を馬鹿にするのもいい加減にしろよ。」

みつる:「・・・」

講師:「・・・いいか、みつる。よく聞け。」

みつる:「・・・はい」

講師:「確かに俺は英語が話せない。」

みつる:「話せないのかよ!!!!!!!!!」

講師:「黙って聞け!!!!!!!!」

みつる:「は、はい・・・」

講師:「いいか、よく聞け!『名前』は『ネーム』だからこの場合は『マイネームイズたけし・・・』」

みつる:「授業に戻ってんのかよ!!!!!!!!もうこんな授業受けても意味ないよ!!辞めます!授業料返して下さい!!」

講師:「・・・アー?」

みつる:「授業料返せって言ってるんだよ!」

講師:「オー、ソーリー。アイキャントアンダースタンドジャパニーズ!!」

みつる:「もういいよ!」

二人:「どうも、ありがとうございましたー」
                                          終