〜赤道周辺の気候について〜





 夏は暑く、冬は寒いものです。
 日本では8月にもなると、各家庭でクーラーがひっきりなしに動き、子供も大人も冷えたカキ氷を食べ、ビーチは行楽客で賑わい、みなが暑い夏を堪能します。そして正月になれば、外に出るものは防寒着に身を包みスキーに行き、家にいる者はコタツにもぐり、家族や親戚と鍋を囲んで寒い冬を過ごします。
 近年地球温暖化などで冷夏や暖冬の被害が叫ばれていますが、こういった基本的な部分には特に影響を与えることもなく、夏は暑く冬は寒いということは常識以前の定着した事実ということになっています。

 しかし、世界中の全ての地域が、夏は暑く冬は寒いのでしょうか?
 もちろん、答えはノーです。

 例えば、日本が連日の真夏日で稲川淳二やチューブが張り切っている時、オーストラリアでは雪が降っています。北風小僧がささやいて木枯らしが吹き、ハウスシチューのCMや広瀬香美の歌声が流れている頃、バリ島では水着のダンサー達が暑さをますます増進させるファイヤーダンスを踊っています。
 つまり、同じ8月でも日本は夏なのにオーストラリアは冬、日本は真冬である1月でもバリ島は真夏であるということです。もっと言えば、北半球と南半球では季節が全く逆になっているということが言えるのです。
 これは地球の南極と北極を結ぶ中心線である地軸が傾いていることと、地球が太陽の周囲を1年がかりで公転しているということに原因があるのですが、ここで僕にはひとつの疑問が湧き上がりました。

 北半球とはつまり赤道よりも北ということです。南半球とは赤道よりも南ということです。ということは赤道を挟んで北側と南側が季節が反対になっているということなのですが、例えば赤道から10mだけ北にある場所と、10mだけ南にある場所でも季節はやっぱり正反対なのでしょうか?赤道のすぐ北にある町が真夏の時、赤道からほんの少しだけ南にある町は真冬なのでしょうか??

 「北半球と南半球の季節は逆である」ということが完璧な真実だとしたら、例えば赤道の下をバスや電車などで通過した場合、今まで真冬でコートを着ていたのに突然真夏になり、蒸し暑くなって全員全裸になるというようなことがあってもおかしくない、ということになります。
 常日頃からこのような学術的探究心を忘れず、友人からは「エジソンくん」や「ガリレオガリレイくん」というあだ名で呼ばれ、怪盗とんちんかんでいったらグリン、ズッコケ三人組でいったらハカセにあたる立場の僕ですが、この度この疑問を解決する格好の機会を手に入れることができました。今回南アフリカからだんだんと大陸を北上するにあたって、まさに赤道の真下を通過することになったのです。

 僕が旅の途中赤道直下の町にさしかかったのは1月でした。日本ならば真冬、オーストラリアなら真夏の時期です。一体この辺りの季節は今何なのか、また本当に赤道をまたぐだけで季節が変わるものかを確かめるために、早速僕は赤道に向かいました。
 親切なことに、赤道の真下には看板が立ち、北半球と南半球の境目は非常にわかりやすくなっていました。そして、その赤道のすぐ脇には、一人の少年が寒そうにたたずんでいました。






北半球にたたずむ少年






 写真の右下、わかりづらいかと思いますが「01 18(1月18日)」の日付が入っています。また、アフリカ大陸の絵が書かれた看板が立っていますが、まさにこの看板は赤道の真下に位置しています。すなわちこの写真で見た場合、看板を挟んで右側が北半球、左側が南半球になるわけです。少年が凍えながら立っているのは日本側である北半球になりますので、当然1月のこの時点では真冬です。彼の厚着も北半球ではごく当たり前のことです。
 ただ、今少年が立っている位置から僅か2m左側に移動すると、そこは南半球、つまり真夏ということになります。これはどう考えてもおかしいです。少年がこれだけ寒そうにしている場所から、ほんの数メートル移動するだけで真夏の暑さになるなどということはありえません。と、いうことは、「北半球と南半球は季節が逆である」ということの信頼性も薄くなってくるのではないでしょうか?これは学校で使っている理科の教科書の改訂が必要になるくらいの衝撃の事実ではないでしょうか??

 その時です。北半球で凍えていた少年が南の方へ歩き始めました。
 ぶるぶる体を震わせながらほんの数歩で赤道を越え、南半球に到達したまさにその瞬間、僕は信じられない光景を目にしました。
 なんと、彼は突然、暑そうに着ていた服を脱ぎ始めたのです!!
 そして・・・










南半球にたたずむ少年











ああ!!なんということか!!!

 写真の日付、そして後ろに止まっているバンの位置を比べてもらえばこの2枚の写真がほぼ同時刻に撮られたものだとわかっていただけると思います。
 最初僕は、自分自身の目を信じることができませんでした。しかし、これは事実なのです。まさにたった今目の前で起こっていることなのです。
 そうです。
 この写真によって、たとえ赤道付近、北半球と南半球が
ほんの数メートルの距離にあったとしても、北半球が真冬の時は南半球は真夏、つまりどんなに近かろうが、本当に北半球と南半球の季節は正反対だということが証明されたのです!!!
 赤道直下の町に住む人は暑かったり寒かったりしたらちょっくら反対半球へ移動するだけで急に気候が変わり、夏でもスキーが出来、冬でもプールで泳げるわけです。この町がもっと開発されれば、ひょっとして軽井沢も裸足で逃げ出す最高の避暑地になるのではないでしょうか。ただある意味、移動のさい常に夏服と冬服を持参し、
いちいち赤道を越える度に着替えるというのも限りなく面倒くさいですが。

 この少年の写真は、もしご依頼がありましたら中学校理科「第二分野」の教科書会社様に掲載を許可しても良いと思っています。このようにはっきりと撮られた実際の現場の写真を見て、中学生たちはきっととても
間違った知識を植えつけられることができるでしょう。








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