〜ロンリー香港ディズニーランド(後)〜





 ある意味レストランの中では
ミッキーマウス以上の注目を浴びながら1人ランチを終え、人気キャラクター(トゥーン)の気分が良くわかるままにオレは惜しまれつつ店を出た。
 きっと今頃、カフェの中はオレの話題で持ちきりだろうな……。なにしろオレがいたさっきまで、コーナーカフェは「1人でディズニーランドに来て寂しくランチを食べる男をみんなで観察する」という特設のアトラクションと化していたからな。はっきり言って、オレにとってはホーンテッドマンションをはるかに超える悲劇的な気分のイベントであった。あまりにも悲壮感が漂い過ぎており、もしあそこでオレが「みなさんこんにちは。僕がこの度ホーンテッドマンションに配属されることになりました、1000体目の幽霊です」と自己紹介しても、
誰も疑問を抱かなかったであろう。

 午後は軽く園内を、仲の良さそうな家族連れやカップルを見ていい笑顔になりながら散歩し、時間を合わせライオンキングやゴールデンミッキーショーなどの素敵なショーを
堪能した。
 ここでもオレは着ぐるみやダンサーの人たちの愛らしさや一生懸命な姿に心を動かされ、やはりいい笑顔になった。とはいえ、朝からずっといい笑顔なのに仲良くなってくれる人は誰もいない。
やはり、「世界中誰だって微笑めば仲良しさ」というのは言い過ぎじゃないのか? わかっただろ。現実問題、世間というのはそう甘くないんだよ。その「笑えば誰でも友達」みたいな部分は、撤回した方がいいと思うぞ。……なに? その前に、ミッキーのことを着ぐるみなんて言うなって?? あれは着ぐるみじゃなくて、ミッキーマウスなんだって??
 
ガキみたいなこと言ってんじゃねーよ。いい歳した大人がよっ。

 さて、ショーに感化されオレはいい笑顔でメインストリートUSAでステップを踏みながら、これからどうしようかと考えていた。もう大きなアトラクションは回ったし……ショーも見たし……。
 するとその時。どこからか、いや、
自分の内なる声、自分を支配している脳の中の別の自分が、何かオレに命令口調で囁く声が聞こえて来た。なんだ。何を言っているんだ??



「…………撮りなさい…………」


「なに? なんだい内なる声?


「写真…………撮りなさい…………」


「写真かい。そんなもの、朝からバシバシ撮ってるじゃないか!」


「記念写真を…………撮りなさい…………」


「記念写真って、自分の写真ってことですか?」


「記念写真を…………
キャラクターと一緒の2ショット写真を撮りなさい…………


「…………。 なんだって……」


「記念写真を…………
キャラクターと一緒の2ショット写真を、10体分撮りなさい…………」


「はいわかりました御主人様」




 …………。


 うーむ。
何を言っているんだオレの内なる声は?? いいかいいいかい、よーーーーく考えて見なさいよ。着ぐるみと並んで記念写真を撮って喜ぶのはせいぜい子供か女性だろうがっっ!!!! オレは男だっ!!! しかも1人で来ている成人男子!!!! 2ショット写真なんて頼んだらさすがのミッキーも引きまくるだろっっ!!!!!



「文句はよしなさい。いいですか。戦国時代の武将・山中鹿之介という人は、天に向かって『願わくば、我に七難八苦を与えたまえ』と祈ったと言われています。……ってドラえもんの中でのび太くんのお父さんが言っています。すなわち、人間はたくさんの苦難を乗り越えることによって成長するのです」


「どんな成長が見込まれるんですかねミッキーと記念写真を撮ることが」


勇気です。恥ずかしさを捨ててしまえば、人間出来ないことなど無くなるのです! いいですか、あなたは今後好きな人ができた時に、恥ずかしいからといって自分の気持ちを隠し続けるんですか? 好きな気持ちを打ち明けることも出来なくていいんですか??」


「やってやるっ!!! 写真を撮ってやるっ!!! 香港のディズニーキャラクターたちに、大和魂を見せつけてやるっっっ!!!!」



 …………。
 えーい、
どうせ全てのアトラクションを回っても時間はたくさん余るんだっ!! 思い付いたが最後!! やるしかないっ!! 一度思い付いたことは、やらなければ後悔するんだ!! 今まで全ての物事に対して躊躇して逃げて来た自分、そんな自分をこの香港ディズニーランドで変えてやるんだっっ!!!!

 オレは、どうやら冷静さを
見失っているようだ。いくらなんでも平静な状態のオレだったら、さすがに「一人でディズニーランドに来る」という決断が限界ギリギリのポジションだったはずだ(それでも常人の限界は十分越えた所にいるはずである)。だが、まさか自らその限界の壁を破りさらに先の世界に行くことになろうとは。
 きっとオレは今朝から何度も度を越した恥ずかしさを味わったことにより、段々と恥ずかしさに慣れてしまったのである。だからこそ、より大きな恥に挑む気持ちになれたのだ。オレはここでひとつ大事なことを学んだ。そうだ、壮大な目標を達成しようと思ったら、まずは小さな目標から一つ一つクリアして行くことが大切なのだ。そうでなければ、大きな目標なんて到底適えられるわけ無いんだ。「小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道だと思う」。「今自分にできること。頑張ればできそうなこと。 そういうことを積み重ねていかないと、遠くの大きな目標は近づいてこない」。どちらも、イチローの言葉だ。
 まあそういうことで、じゃ、ファンタジーガーデンに行くとするか……。
 説明しよう。「ファンタジーガーデン」というのは東京ディズニーランドでのトゥーンタウン、ミッキーの家あたりに相当する、ディズニーのキャラクターが常時滞在していて誰でも一緒に写真を撮ることが出来るという、記念撮影に最適なアトラクションなのだ!



「…………駄目です」


「えっ?」


「そんな邪道なことをしては駄目です。簡単にキャラクターと会えるファンタジーガーデンは、
禁止です」


「なんだよそれは! じゃあどうすればいいんだよ!!」


「自分で
歩き回って探しなさい。パーク内のあちこちにランダムで出没するトゥーンを見つけて記念撮影をするのです。それが真のファンなのです」


「な、
なんという厳しさ……。オ、オレはこんなにも自分に厳しい人間だったのか……」



 ぐうっ。これは、
かなりの試練である。彼らがパーク内のどこに出て来るかもまったくわからない上に、10種類のキャラクターをかぶらないように見つけなければいけないのだ。しかも、その全てと記念撮影をする。これは、恥ずかしさも難易度も文句なくAクラスの課題である。……だいたい、誰にシャッターを押してもらうんだ?
 そうだ、同じキャラクターでも、時間が経ってからもう1度見つけたら
きっと中の人が交代してるだろうから、それは2種類ということにしていいかい? ちゃんと2回撮るんだから。それくらいいいでしょ? 時間を離せば。



「ダメです。っていうかだいたい、中の人とかいないんですっっ!!!! ミッキーはミッキー、グーフィーはグーフィーなんですっ!!! そういう生き物なの!!!! 珍しい動物なのっっ!!!! 熊のプーさんは時々人里に下りていって人間を襲っているの!!!!」


「わかりましたよ……。それじゃああなたは、グーフィの給料は犬用ジャーキーとかドッグフードだって言うんですね? そんな給料でも、グーフィの中の人は文句を言わずにちゃんと毎日出勤するって言うんですね??」


「だから中の人とか出勤とかそういう認識は無いんだよっっっ!!!! あれは進化した犬なのっ!!!! ここに住んでるのっっっ!!!!!」



 ああ面倒くさいぜ畜生……。

 あっ!! ダックだ!! つがいのダックがいる!!!
 まず最初に発見したのはドナルドとその彼女、氏名不詳の女の子ダックの2匹(2体? 2羽?)である。周りにはオレと同じようにアヒルを発見した通行人が、記念写真を撮るために列を作っている。よし……、
並ぶか……。
 オレは、幸せ感がたっぷり漂っている人と人とが織り成す列に、男1匹よいせ〜〜っ!!!と気合を入れて紛れ込んだ。か、勘違いしないでくれよ。オレは、男1人にもかかわらず「ドナルドちゃんと記念撮影をしたいのっ。キュピッ
なんて思って並んでるんじゃないんだぞっっ!!!! 本当は写真なんか撮りたくないんだっ!!! 撮りたくないけどあえて並んでいるんだっっ!!!! そこの所を誤解しないようにしてくれよっ(だからどうした)!!!!

 さて、順調に列は進んでいよいよ次はオレの番になった。ここでオレは……、
屈辱を忍んで、後ろに並んでいる香港人の女の子に声をかけた。



「エクスキューズミー。すみませんが、僕これからドナルドの横に行くんで、シャッターを押してもらえませんか?


「ハァ(なにこいつ友達いないの?)?? ……オー、オーケー」



 女の子は
かなり本気で顔が引きつっていたが、なにしろやはりここは訪れる全ての人を優しくしてしまうディズニーランド、彼女も「いけない、いくら不気味だからってここで断ったら今日1日の素敵な思い出にモヤがかかってしまうわ! 他の場所でなら絶対に無視するパターンだけど、ずっと来たかった夢のディズニーランドなんだもん、今回は引き受けてあげましょうよ!」と思ったのだろう、オレからカメラを受け取り撮影体勢に入ってくれた。
 オレはたった1人で、ゆっくりとドナルドカップルの方へ進んだ。
その時、2羽のアヒルの中でどのような感情が渦巻いていたかはわからない。しかし、さすが夢の国の住人。ドナルドはグヮーグヮー言いながら(言ってないかな)オレの肩にポンと手を置き、彼女の、そうそうたしか名前はデイジーちゃんは、思わず「こ、この子オレのこと好きなのかなっ」と勘違いさせられてしまうくらいスムーズに、オレの肘に腕を絡めてポーズを取ってくれた。あ、あなたそんな大胆な……。いいの彼氏が隣にいるのにそんなことしちゃって……? それに、そういう八方美人タイプは同性から嫌われるよ??
 で、でも、
うれしい。なんか可愛いふたりに挟まれると、恥ずかしいんだけどでもすごくハッピーな気分だ。男1人だからって嫌な顔ひとつせず、他のお客さんと接するのとまったく同じ表情で、まばたきもしないでこうして記念写真に付き合ってくれる。アヒル腹の部分が手に触れるとモコモコして気持ちいいし、オレの肘にかかるデイジーちゃんの腕にはなんか女性の温もりを感じる。あおお〜〜、ここ何年も味わったことのない感触だ〜〜(涙)。
 じゃあ写真お願いします。うぐうう……っ、
後ろで並んで見ている全員からの好奇の視線が刺さる……オレの羞恥心は今、ボコボコに叩かれ鍛えられている……。鍛えられているのか? 成長のために本当に必要な試練なのかこれは?



「撮りますよ! ハイ、イーアルサン!」


「サンキュー! 謝々!!」



 オレはダックカップルと後ろの女の子に礼を言い、デジカメを受け取ると早速モニターで画像を確認してみた。

 …………。

 
撮れてない……。
 写真が、撮れていないのだ。このカメラは他のデジカメと同じようにまず半分くらいシャッターを押してピントを合わせ、そこからもう一度深く押し込むことにより撮影になるのだが、ピント合わせの時にも「シャシャッ」と音がするため、デジカメを扱いなれていない彼女はその音だけ聞いてもう撮れたものだと思い指を戻してしまったのである!!
 でもこれは、彼女悪くない。オレがちゃんと説明しなかったせいだ。と、ともかく申し訳ないけどもう一度頼もう。
おおっっ!!!!

 オレがモニターから顔をあげると、既にさっきの女の子は
キャーキャー言いながら大はしゃぎでドナルドに抱きついており、その前では友達がガバっとカメラを構えている。そして後方には順番待ちの人たちが迫り、今か今かと自分の番に向けて期待のオーラを出し続けているのがわかる。
 ……も、
もう頼めない。既にオレは彼らの領土からはみ出ており、明らかに「自分の番が終わった人」になっている。ここで無理矢理もう1枚と頼んだら、それは割り込み扱いになるだろう。そんなマナー違反なことをしたら、後ろで目をキラキラさせながら見ている子供たちの教育上非常に良くない。くううう……(涙)。こうなったら、もう1回列に並び直すしかない〜〜(号泣)。ディズニーランドでアトラクションにも他のキャラクターの所にも行かず2回連続で同じ記念写真の列に並ぶなんて、どんだけドナルド好きな男子なんだオレはっっっ(号泣)。



「は〜い、ごめんなさいね、ドナルドとデイジーはそろそろファンタジーガーデンへお出かけしなきゃいけないからねっ! もし一緒に写真を撮りたかったら、ファンタジーガーデンに来てね♪」


「えっ。そんな……。僕にはファンタジーガーデンでは撮っちゃいけないというルールがあるのに〜〜〜っ(涙)」



 オレが列の後ろに並び直そうとした所、ドナルドのマネージャーと思われるキャストのお姉さんにストップをかけられた。
ここでの記念撮影サービスは、もう終わりらしい。なんてこった。結局1枚の写真もゲットしていないんじゃあ、オレはただ恥をかいただけじゃないか。なんだったんだオレの味わった屈辱は。
 でも、嘆いている暇は無い。こうなったら次から次へと行くしかない。キャラクターを見つけても、こうやって時間が来ると撮影タイムは終わってしまうのだ。
10体も探して写真を撮らなきゃいけないのだから、恥ずかしがっておどおどしている場合じゃないぞ(どこからその義務感が来ているのかは不明)。

 ダックにフられたオレは傷心のままパークを歩くと、今度は眠れる森の美女を見つけた。この人は一応人間という設定なので、着ぐるみ、じゃなくて動物的な外見はしておらず、お姫様の格好をした普通の白人のお姉さん(たしかに美女)である。
 彼女は元々香港に住んでいる人なのだろうか? それとも、アメリカなどから派遣されて来たのだろうか? 香港への辞令が出たとき、どういう気持ちになったんだろうな……。って
そんなこと考えてる場合じゃないな。記念撮影をしないと。
 女性や子どもの割合が多いディズニーランドでは若干本物のお姫様の需要は低いらしく、今回は大して待たずにお願いすることができた。なにしろ人間タイプだけにリアルに表情がわかるが、
男1人で近寄っても決して笑顔を崩すことは無い。さすがプロ。

 今度はすぐ隣にキャストのおねえさんがいたので、彼女に撮影を頼むことにした。オレが美女の隣にスタンバイすると、先ほどのデイジーと同じように美女もオレの手に自分の腕を回してくれた。……
おおおおおっ(涙)。まさか白人女性が腕を組んでくれるなんて、オレの人生でこんなことが起きるなんて夢にも思わなかった〜〜〜〜っ(泣)。まさしくここは夢の国じゃ〜〜〜〜〜っっっ(号泣)!!!!
 でも、この美女の積極さは……、
もしかして彼女は、オレのことを自分を迎えに来た王子だと勘違いしているのではないだろうか? オレの高貴な外見だけを見て、王子様だと早とちりしてしまったのではないだろうか??

 …………。

 
そうだよ〜〜〜僕が王子様だよ〜〜〜〜〜っっ!!! チューを!! チューをしてあげるよこの引きこもり王子が!! チューを、チューをっっ!!! もうこの美女起きてるけど、もっと目が覚めるチューを!!!!!



「はい撮りますねー! ハイチーズ! カシャ」



 カメラを受け取りチェックしてみると今度は完璧。やっぱり経験豊富なキャストの人に頼むと違うな。さっきも、最初からキャストのおねえさんを探してお願いすれば良かったんだよ。
 オレの次の家族連れは、写真を撮った後眠れる森の美女に
サインを頼んでいた。美女は色紙にスラスラとペンを走らせていたが、なんて書いてるんだろうか。「眠れる森の美女」って書いてるんだろうか。自分で「美女」なんて書くのって、どうかと思うよちょっと。というか、欲しいかサイン??

 さて、それからオレは足を使って園内を歩き回り、ぐるぐると何周もしながら記念写真を撮りまくった。まずは主役マウスのミッキーミニー、そしてグーフィともう1匹なんだかよくわからん黄色い犬トイ・ストーリーに出てくるらしい宇宙服を着た顔の長いプラスチック風の人。「ディズニーランドのザ・たっち」ことチップディール。これで眠れる森の美女と合わせて、一緒に記念撮影をしたキャラクターは合計8匹(8人)になった。
 さすがに写真撮影をキャストの人に頼むと、絶対に失敗をしない。最初にアヒルのところでオレに恥をかかせたアホ女とは違うぜ。
オレの恥ずかしさの十分の1でも体験してみろってんだよ。耐えられなくて泣くぞきっと。
 とにかく、ようやく残り2匹だ……。おっ。またなんかいるぞ。ネコだ。ネコがいる。ピンクのリボンを付けた白ネコだ。こんなの見たことないぞ。ディズニーにネコなんていたんだ。知らなかった。そしてなんかちょっと目つきが不気味……。まあともかく、
知ってようが知っていまいが1匹は1匹。



「ネコさん。一緒に写真を撮ってもらってもいいですか?」


「ニャンニャン! いいアルよ♪」



 オレはモコモコした大猫ちゃんの横に並んだのだが、
その時またもや自分の内なる声が聞こえて来た。



「…………つきなさい」


「え? なに??」


「抱きつきなさい。ネコちゃんに」


「…………」



 どうやらオレの中には、
SとMが確実に同居しているな。命令する方もする方だが、もうこの際なんでもやってやる!! とヤケになる方もなる方だ。おまえら、両方ともおかしい。
 
キャーー!! ネコちゃ〜ん(黄色い声)!

 オレは、少女のような純真なフェロモンを出しながら、ネコちゃんに抱きついた。



微妙に部分的公開




 
ちょっと、ネコちゃんが傾いてオレから逃げている……。あなた、ゲストに寄り添うのが仕事でしょ〜。一人で来てる男に急に抱きつかれたからって、なに引いてるのさ〜〜〜。女の子なんてしょっちゅうあなたたちに飛びかかってるじゃん。オレはただソフトに抱いているだけなのに。男性差別をしないでちょうだいっっ。
 後ほど調べた所によると、このピンクリボン白ネコさんは、
おしゃれキャットのマリーちゃんというキャラクターであった。なるほど。おしゃれキャットのマリーちゃんね。オレはおしゃれキャットのマリーちゃんに抱きついて一緒に写真を撮ったのね。変態かオレは。

 次に見かけたのは、黒いゴリラだ。これは調べてもなんなのかわからなかった。ディズニーにはこんなキャラクターはいないような気がする。もしかして、
着ぐるみを着てディズニーランドに遊びに来ているただの客ではないだろうか??
 でもやっぱり近くに引率役のキャストがいたから、なんらかのものだろう。グーフィと犬猿の仲の猿とか。写真を撮ってもらって、
これで、見事に10体との記念撮影が完了である!!! 長かったぞここまでっ!!!!
 おや? また内なる声だ。なんだ。ねぎらいの言葉をかけてくれるのか?



「あなた、まだ記念撮影は終わりではありません」


「なんでさっ!!! ちゃんと10キャラクターと撮っただろっ!!!」


「ダメです。なぜなら、
チップとディールは2匹で1キャラクターなのです。それぞれを1体とは認められません。そうでしょう? チップとディールは必ず『チップとディール』でひとくくりでしょう?」


「は、はあ……」


「それから、トイ・ストーリーのあの宇宙飛行士みたいなキャラクターね。
あれ、なんかディズニーっぽくないから却下。もっとちゃんと動物的な着ぐるみと写真を撮りなさい。あと2体ね」


「着ぐるみじゃねえんだよっっっ!!!! あの子たちは、着ぐるみじゃなくてそういう生き物なんだよっ!!!! おしゃれキャットのマリーちゃんの悪口を言ったらオレが許さんぞっっ!!!! ……わかったよあと2体ね。撮るよ。全然撮るよ



 なんだかもはやオレは、キャラクターと一緒の記念撮影が
楽しくなってきた。人間、どんな状況にも慣れるもんだ。
 メインストリートに戻ると再びアヒルを発見したが、ドナルドはおらず、彼女のデイジーちゃんだけが一人で遊んでいた。早速カメラを持って近づくと、オレに気づいたデイジーちゃんはキャピキャピした動きで柱の影にピョンと隠れ、そして頭だけをニョーッと覗かせてオレを見てきた。

 …………。

 
かわいい……(号泣)。

 これ、
やっぱり中には誰も入ってないよ。だって、人間がこんなに可愛い動きするわけないじゃん。しかももし中に人がいるとしたら、それは香港とはいえ中国人なわけだよ? 絶対ありえないって。こんな可愛い存在は中国にはパンダくらいしかいないって(涙)。
 またオレはデイジーちゃんに腕を組んでもらい、写真を撮った。なんだか、
病みつきになりそう。東京に帰っても、一人でディズニーランドに行っちゃいそう。年間パスポートを買っちゃいそう。

 撮影後、また未知なるキャラクターを求めて散歩をしたが、写真ゲット済みの犬とかネズミしかいなかったのでまた戻って来ると、おそらく遅れてやって来たのだろうドナルドダックがデイジーちゃんと一緒に撮影サービスに参加していた。先ほどはデイジーちゃんだけだったので周りに人が居なかったが(かわいそうなデイジーちゃん)、今度はおなじみの待ち行列が出来ている。
 オレもならぼーっと。
 ドナルドとはまだ撮ってないからな。ドナルド&デイジーのダックズと同じフレームに収まりたいんだオレは。あの時のリベンジをしたいんだ。
 数分後、オレの番が来たのでキャストさんにカメラを渡してダックズの方へ行くと、デイジーちゃんが
「あっ、あなたさっきの! また来てくれたのねっ! わーいとジェスチャーで伝えてくれるではないか。
 そんな内容を身振り手振りだけで伝える表現力も凄いが、
単純にデイジーちゃんに覚えていてもらえたのが嬉しい……(涙)。やっぱり僕ってとても印象が強かったんだね……なんでだろう……(号泣)。
 オレは今、
モーレツに感動している。ディズニーランドは、男1人で来ても全然楽しめるじゃないか!!! だって、デイジーちゃんも他のキャラクターも、何も喋らないにもかかわらず本土の中国人より簡単に意志の疎通が出来るんだぜ?? だって彼女たちはオレに構ってくれるんだもん!!! 必要としてくれるんだもん!!! 中国と全然違うっっ(号泣)!!! ここには誰も敵がいないんだよ〜〜〜〜っ(涙)!!!!

ドナルドとデイジーちゃんに挟まれております





 うう……。

 ダックズと別れると、今度はクマのプーさんを見つけたので最後の撮影だ。
プーさ〜ん!! 好きよっっ!!! ぎゅーーーっ!!!






 …………。

 
プーさんも引いている……。いやだなあもう。そんな、不気味なものに抱きつかれたような傾き方しないでよ。テンション下がるじゃない。

 ともかく、なんだかんだ言いながら最終的に10数体のディズニーキャラクターたちと記念撮影をして、これらの写真は
僕の宝物です☆ ←壊れた男

 もはやこの時点ではディズニーランドは1人でも楽しい、いや
むしろ1人の方がデイジーちゃんとも遊べるし好き放題出来るということを悟ったオレは、まだ行っていないアトラクション、シンデレラのカルーセル(メリーゴーランドのことね)や空飛ぶダンボにも1人で乗ることにしたのである。

シンデレラのカルーセルに乗馬しながら。



 いや〜〜あ〜ははっ!!





 …………。





 
これは寂しい……。

 このシンデレラのメリーゴーランドに誰とも喋らず一人で乗っているのは、
人間の精神にとって決して良いことではないな(涙)。恥ずかしさに慣れて自分を鍛えるというより、これはただの恥知らずだ(号泣)。

 最終的に、オレはショーも見たし子供専用以外のアトラクションは制覇したしキャラクターとも山ほど写真を撮ったのだ。
どうだ。オレ以上に香港ディズニーランドを堪能している奴が他にいるかっ。いや、堪能したと言えるのかオレは。もしかして本当の楽しみ方からすると全然堪能出来ていないのでは……。

 閉園近くになると花火が上がり、その花火ショーを最後にオレは全ての客とともにディズニーランドを出て、地下鉄の駅へ向かった。ああ、オレは今日1日……、
心身共に疲れ切った。








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