ジョーマヌケニーグル


 大量破壊兵器のコントでネタにしたこともあるのだが、超能力で行方不明者を探すというTV番組がある。昔興味深々で見ていたのだが、毎回絶対に見つからないし、あまりにバカバカしいためそのテの番組はここしばらく見ていないのである。
 そんな中、とある事情で昨日(2004/10/02)やっていたFBI超能力捜査官の番組を見ることになったのだが、最初の1つの事件が終わったところで忍耐力も限界に達しリモコンは叩きつけられテレビは持ち主によって罵詈雑言を浴びせられ永遠に消されるのであった。

 みのもんたの司会でジョー・マクモニーグルというおっさんの特集だったのだが、一応ここではプライバシーの保護のためジョン・モクマニーグルと呼んでおこう。
 モクマニーグルはFBIの超能力捜査官で、スターゲートプロジェクトという米陸軍が極秘裏に進めていた計画に参加しており、敵のスパイの居場所を探ったり、逆に遠隔透視で敵国の情報を探ったりといったスパイ活動もしていたらしい。番組の冒頭はモクマニーグルの経歴紹介で、映像の中でプロジェクトの参加テストとか実験内容とかを再現していたのだが、そんな軍事機密のプロジェクトを日本のテレビで大公開するとは、FBIもしくは米軍が太っ腹なのかウソかどちらかであろう。もし内容が事実で、さらにアメリカ政府の許可をとらずに軍事機密のプロジェクトに関する内容を勝手に放送しているとしたら、
昨日の時点で日米同盟が破棄されていると思うのだが、どうなんだろうか? 昔のことだからもういいのだろうか??

 さて、その後過去に解決した代表的な事件として、NATO軍のドジャー准将が(誰だそれ)誘拐された事件で見事犯人が潜む街の名を言い当てたというのを紹介していた。モクマは正確に街の名前を言い当てたそうだが、
それが元で事件が解決したとは誰も一言も述べていなかったところが興味深い。
 大体モクマの透視で事件が解決したのだったら国際的な大ニュースで死ぬほど報道されまくっていたはずだし、こんな日本のテレビ番組に出演して小銭を稼がないでも世界がモクマを離さないだろう。
 このように、本人はなんら関わっていないにも関わらず後から「あの時これを的中させていた!」と言いはる手法は、
5年ほど前になんとかダムスという予言者をテーマに書かれた本を思い出させる。
 尚、今までモクマニーグルといえば必ず「イランのアメリカ大使館占拠事件を解決した!!」という煽り文句で紹介されていたのだが、今回イランのイの字も出なかった上に突然NATO軍とか新しい話を持って来たということは、多分それで騙し通すのが苦しくなってきているからではないだろうか。
 たしかアメリカ大使館占拠事件では、モクが大使館の見取り図や、犯人の立ち位置、そして人質の居場所まで言い当てて人質救出作戦を成功に導いたという触れ込みだったが、アメリカはそもそも人質救出作戦に
失敗している。
 私は旅の途中でイランのアメリカ大使館を見る機会があったのでチラとガイドブックを読んだ程度だったが、それだけの知識でもモクの供述はなんかおかしくね?と思った記憶がある。アメリカ大使館事件では、人質は犯人に解放されたのだ。アメリカは
特殊部隊で突入を図っているが、おもいっきり失敗しております。444日間にわたって人質を監禁され、最終的に犯人によって解放されたこの事件のどこにモクマニーグルの手柄があったのだろうか??

 尚、この件については先にこちらのサイトの管理者団衛門さんが書かれています(こちらでは他の能力者の過去の予想結果についても暴かれています)。

 ということで、以上の矛盾がだんだんと世の中に知れ渡っていくに従って今後はイランの件は触れないことに決まったんだろうか??

 さて、私も去年こいつが
「フセインはもう死んでいる!」と言い放ったのを聞いているのだが、とりあえず我慢をして最初の事件についてモクマニーグルが遠隔透視するコーナーを見てみることにした。
 今回彼が探すのは、吉川友梨ちゃんという、下校途中に行方不明になっている女の子である。以前彼の番組を見た両親が、自分の娘を探してくださいと番組宛にメールをしてきたらしい。娘が行方不明になって藁にもすがる思いの両親に「もしかしたらなんとかしてくれるのでは・・・」と期待を抱かせてやっぱり
裏切る。これほどの残酷なことがあろうか。

 さて、肝心の遠隔透視であるが、マクモニーグルはまずアメリカの自宅から透視を行い、自分で地図を描く。最初に書いたのは日本地図であるがそれは置いといて、次に描いた地図は@大阪城近辺の詳細な見取り図であった。もちろん描いた時は大阪城と言って描いたわけではなく、城を描いて、線路や川を描いて、人口260万人の都市だと宣言して、それを見たスタッフの判断で大阪城周辺の地図だと判明したのである。その後で、マクモくんは城の絵や横に立つ塔の絵なども描いており、「なんと実際の大阪城の景色にピッタリだ!!」と驚かれていたが、一体どこをどう探せば驚く部分があるのだろうか。ヤツは大阪城近辺の地図と大阪城公園の風景を描いただけである。とりあえず、
日本のテレビ局がまた撮影にくるとわかった時点で今回は大阪の地図を描くことに決めたのだろう。きっと、こっそりモクマニーグルの自宅を探せば日本地図が出てくるはずである。
 ちなみにもしアメリカのテレビ局がオレに同様の透視を依頼してきても、全く同じことができるであろう。ただオレはあらかじめアメリカの地図を買うかネットで調べておいて、その日になったら「ここに橋がかかっています・・・」などとえらそーに語りながら描けばいいだけだ。尚、マクモの遠隔透視を信じるとすれば、上空からの俯瞰やもっと接近しての風景まで見ることができるようだが、人口260万人はどこでわかった? 上空から見ることができるということは……。

 
数えたんか??

 ……いや、数えたんじゃなくて、
調べたんでしょ。グーグルで「大阪」「人口」とかで検索して。

 そして次に描いたのは、A公園とその周辺の路地。そして最後の一枚は、どこかのBアパートの見取り図(通路を挟んで左右に6個づつ部屋があるというもの)。
 Aの公園は、
大阪城公園ではないところがポイント。番組では、大阪に着いた後でいきなり「我々は該当する公園を見つけ・・・」と何をどう探したかわからないがとりあえずその該当する公園を発見したらしい。該当すると判断された理由は述べられていない。
 
大阪つながりだけか??
 尚、Aに描かれているのは、公園の四角形とその周りに網の目のように縦横に並んだ道を示す線だけ。この条件に当てはまる公園は全国に無数に存在すると思うので地図としてはどうでもいいが、ポイントは、マクモニーグルが「公園からこの道を縦に進んで右に曲がって左に曲がると、Bのアパートがある」と断言しているところである。これは具体的である。
 で実際どうなったかというと、公園からマクモの描いた地図を辿って進んだところには、該当するアパートは存在しなかった。視聴者・ゲスト、拍子抜けの瞬間である。しかしここで終わらないのがテレビ番組の執念。なんと、その時
別行動をしていた黒木さんが、別の場所でBの見取り図に合致するアパートを見つけたのである!!!!




 ……。






 
結局地図は無視かよ!!!!

 とりあえずAの地図の存在は、ここで完全に闇に葬られることとなった。ちなみに黒木さんとは、警察ジャーナリストという肩書きの元警察官である。元警官である人物が、幼い娘が行方不明になるという不幸を背負ったご両親を
おちょくるのに協力するとは、非常に悲しいことである。
 しかし最終的にマクモニーグルが描いた地図とは全く関係なくまたも突然該当するアパートが登場しているが、同じような見取り図のアパートなんて全国に無数に……いや、もう言うまい。
 尚、この後スタッフはアパートの空き部屋に意味もなく侵入し、布団などを映して「人の生活した跡が!」と報告していたが
だからどうした。
 そして史上最悪の展開が。スタッフがアパートのゴミ箱を漁り、中から出て来た人形「何か事件と関係あるかも
(根拠ゼロ)と言い出し、わざわざ友梨ちゃんの父親に届け、「警察の担当の方に渡して相談してみます」と言わせるという暴挙を働くのである。ただのそのへんの道端のゴミ箱から見つけた人形を、無理矢理「娘さんとなんか関係あるかもしれません」と言って父親に押し付けているのだ。そして、今回の捜索活動はそれをもって終了した。
 人形を押し付けられた父親は「警察の方に相談します・・・」というようなことを言っていたが、本当に警察にあんなゴミを提出したら警察の心証を悪くするだけである。
 娘の無事を祈る親に期待を抱かせ最終的に「人形というのは友梨ちゃんと同じくらいの年齢の子供が好むものだからもしかしたらこのゴミの人形も友梨ちゃんとなんらかの関係があるかもしれない」という理由だけでゴミを渡してそれで終わりである。
 ここで考えてみよう。もしこれがテレビでなくて、街で有名な占い師に友梨ちゃんの両親が個人的に頼み、そして占い師は金をとって同様の捜査をし同様の結果(ゴミ押し付け)に終わったらどうだろう。立派な詐欺ですよね? 
6時のニュースで悪徳商法として特集組みそうですよね??
 
 ではマクモニーグルは特別な存在だから許されるのかというともちろん特別ではない。今回の捜索で超能力オヤジが透視して当たったものは
ひとつもない。行ったことのない場所の地図を描けてすごいならオレもすごい。なにせ今手元にある地球の歩き方を5分見れば、行ったこともないロードアイランド州ニューポートの地図をマクモニーグルくらいの正確さで十分描くことができる。アメリカ人のテレビ局スタッフはぜひオレの描く地図を持ってニューポートに行って「おおっ!! この地形はあの日本人超能力捜査官が描いた地図に完全に一致している!!!」と絶賛してほしい。

 尚、話を聞くと、そしてネットで調べてみると実際にマクモニーグルが行方不明者を発見したことも多いらしい。しかし、今回のように事件性のある課題について解決したことはあるのだろうか? 一度もないのではなかろうか?
 例えば、10年前に蒸発した父親を探しだしてもそれは全く驚くべきことではない。なぜなら、テレビ局のスタッフがあらかじめ探しておいてマクモニーグルに地図を描かせて「ここにいます!」と言わせればいいだけだ。それだけで視聴者は「おお!! 超能力で行方不明者が見つかるなんて!!」と驚き視聴率もうなぎのぼりである。ちなみにテレビ局の力をもってすればそのくらいの失踪者を探すのは簡単だというのは、
バラ珍を思い出していただければ明白であろう。別に探偵に頼んでもいいだろうし、探し出せなかった場合は番組で取り上げなければいいだけだ。「番組スタッフが一生懸命探してお父さんを見つけました!」より「FBI超能力捜査官が遠隔透視で行方不明者を発見!!」の方がどう考えても視聴者を呼び込めるに決まっている。
 本当に遠隔透視で場所を当てているならば、通常の失踪事件も、誘拐事件や今回の友梨ちゃんの件など警察が動いている事件性のあるものも、難易度は全く変わらないはずである。ただ場所を言い当てるだけではないか。
 つまり、蒸発したお父さんや家出した息子を発見できるくせに○○事件となると全くデタラメしか言えないということは、やはり関係者総出で(どの関係者か知らないが、少なくとも遠隔透視のような超能力ではなく何らかの人為的な方法で)行方不明者を一生懸命探しているだけだということなのである。今回の事件などは警察が捜査してわからないのだから番組スタッフ(もしくはマクモの手の者)が発見できるわけがない。だから見つからないという結果に終わるのである。
 そしてこういった状況は、
奇跡を演出して教祖を祀り上げる新興宗教にとても似ている。

 さて、このような形で今回いち素人がモクマニーグルにいちゃもんをつけているわけだが、本当におっさんの能力で行方不明者を探し出せるのならどんどん探して欲しいし、どんどん特番を組んでほしい。重大な事件の透視で重要な手がかりの一つでも今まで発見したことがあるのなら、これからも続けていってほしい。しかし今回や今までのように、
事件の被害者の家族を呼び出して期待させて持ち上げておいて叩き落すことだけはもうやめてほしいと願う所存である。
 アパートの部屋数が同じだとかそのアパートのゴミ箱から子供が使うような人形がでてきたという、意味不明な出来事を拾い上げてマクモを絶賛していたみのもんたや斉藤慶子、石田純一 、小橋賢児、乙葉、荒俣宏は友梨ちゃんの両親に対する罪悪感はないのだろうか。以前私が見かけたのは、TVのチカラという番組で別の超能力者が初対面である失踪事件の被害者の両親に対し、「残念ですがあなたのお子さんはもうこの世にいません」と自信を持って伝えていた。
一体世界のどれだけ偉い人間なら行方不明になった子供を持つ親に対して「オレの予想だとあんたの子供は多分死んでるよ」と言う権利があるのだろうか。

 マクモニーグルよ……。あんたが本当にFBIの超能力捜査官なら、
FBIが全精力を挙げても解決に至っていないジョンベネちゃん殺害事件をまず解決しろ。
 昔NATOの将軍が誘拐された時に街の名前を言い当てたそうだが、未解決事件の犯人の名前を言ってみろ。人間のいる場所が見えるのなら、その近くにある表札を読んでみろ。住所の表示を読んでみろ。……まさか日本語だからわからんというオチではないだろうな。

 尚、もし今後本当にマクモニーグルその他の超能力捜査官(その他サイキックダイバー、霊能力者、運命を読む女、なんでもよい)によって未解決事件が解決することがあったなら、私は……その時には、私は……。
 
たいしたことはできませんが、謝罪文でも書きます。

 
※「後から考えてみれば似顔絵が似ていた」とか、「犯人は○○市(←範囲広)に潜伏しているという透視が的中していた」とか、こじつけはダメよ。こじつけは。








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