FBI超能力捜査官はアホだ その1



 2006年4月1日に日本テレビで「FBI超能力捜査官10」という特番を放送していた。
 ……まだやってんのかこの番組。このテの番組というのはもう10年以上昔からあり、学生の頃オレは超能力捜査官のことを
完璧に信じていた。また、過去マクモニーグルの文句を書いたこともあって、どうだろう、最近は多少はまともになったのかな?? という確認を兼ねて一応見てみることにした。しかし、またも5分が経過したところでリモコンは叩きつけられテレビは持ち主により罵詈雑言を浴びせられ消されるのであったが、このようなレポートを書くためにまた一応つけたのである。

 今回最初に登場するのは、


「マダムモンタージュ」という通称の、犯人の顔を透視する能力を持つ(ということになっている)
ナンシー・マイヤーというばあさんである。
 根拠は全く不明だが、事件解決率が77%というように紹介されていた。




 さて、まず番組では、平成16年9月に岡山県で発生した筒塩侑子(つつしおゆきこ)ちゃん(当時9歳)という女の子の殺害事件について紹介される。小学校から帰宅直後の侑子ちゃんが、何者かによって殺害されてしまったという非常に痛ましい事件だ。
 番組では事件を紹介した直後、画面が切り替わって、
「そこで、事件解決のためマダムモンタージュ・ナンシーマイヤーが緊急来日!!」というナレーションと共に、空港に到着したナンシーの姿が映し出されるのだ。

 ナンシーは、早速侑子ちゃんの家へ向かうのだが、その途中、車の中で侑子ちゃんの写真と、事件の新聞記事を見て、早速透視を始める。
 まず彼女が発言した第一の透視内容は、侑子ちゃんの写真を見て
「彼女は、とても明るい子ね」であった。
 ……指摘するまでも無いが、侑子ちゃんの写真を見ればそんなことは誰でも想像がつくし、仮に「彼女は明るい子ね」と予想されて、「いえ、違います。彼女は、すごく暗い子供でした」と反論する奴はいないだろう。とりあえず「明るい子ね」と言っておくのは挨拶のようなものだ。
 そして次の透視は、新聞記事から何かを感じたのだろうか、これだ。




ナンシー「この事件の犯人は、
とても危険な人物だわ」






 なるほど。ナンシーの透視によると、犯人はとても危険な人物だそうだ。

 ひとこと言わせてもらうと、
 
優しくて安全な殺人犯がいたら連れて来い。

 殺人犯が危険だということは、「殺人犯」という単語の意味を理解できる人間なら全員わかる。これは透視なのか?? 
 そんなこんなでナンシーとスタッフ一行は、侑子ちゃんの家に到着した。早速ナンシーは、悲しくも侑子ちゃんが遺体で発見された現場である部屋(居間)へ入って行く。
 ところで、警察の見解によると、侑子ちゃんが帰宅したのは午後3時15〜20分ごろ(午後3時に友達と一緒に下校しているため)で、血を流している姿で発見されたのが3時35分。よって、犯行はたったの15分〜20分の間で行われたということがわかっている。

 さて、居間に入ったナンシーは、透視を行いながら(?)部屋を歩き出した。意図的にかどうか知らないが、壁際を行ったり来たりしてなにやら考えているようだ。すると、ナレーションがこの「壁際を歩く」ということについて妙に取り上げ、


ナレーション「ナンシーは、なぜか部屋の中央を避けるように、何度も繰り返し歩いた」

ナレーション「ナンシーのこの行動(壁際を歩くという)には意味があった」




 と煽るのだ。
 そこで侑子ちゃんのお父さんが登場するのだが、お父さんの仰るには、当時部屋の中央にはテーブルが置いてあり、そこ(部屋の真ん中)を歩くことはできなかったそうなのだ。侑子ちゃんはそのテーブルの脇で倒れていたのを発見されたらしい。つまりナンシーはそれを透視して、(当時の)テーブルにぶつからないよう、敢えて部屋の中央を避けて歩いていたのではないかというのだ。

ナレーション「そのことを、ナンシーが知る由もなかったのだが……」


 すいません、
こじつけです。
 ただ部屋の隅を歩いていただけです。それだけです。もしこの時ナンシーが部屋の中央に進んで透視を始めていたら、「侑子ちゃんはまさにこの部屋の中央部分で倒れていたのである。そのことを、ナンシーが知る由もなかったのだが……」というナレーションが入ったことだろう。
 おまけに、そもそも当日テーブルがあったということをナンシーが知る由がなかったのかどうかもわからない。事件の再現VTRでは、明確に部屋の中央にあるテーブルと、侑子ちゃんの倒れていた場所まで表示されていた。つまり、番組側にはとっくにそこまでの情報があったのである。それをナンシーも知っていたとしても、なんら不思議ではない。まあこの場合はナンシーが知っていたというよりは、
ただのこじつけの可能性の方が圧倒的に高いと思われるが。
 だいたい、当時のテーブルを避けて歩く理由がわからん。
今は無いんだから、別に気にせず歩けばいいじゃん。ぶつからないよきっと。だって、無いんだから。

 まあそんなことはどうでもよい。1000歩譲ってたとえ当時のテーブルの位置が透視できたとしても、何の役のカケラにもならん(なぜならすでにみんな知っている)。問題はこれからであるが、ナンシーはその透視能力を如何なく発揮し、事件当時の詳細な状況を語りだした。




ナンシー「犯人が家に入ってから彼女に手をかけるまでは、とても短い時間だった」








ナンシー「彼女は逃げようとしたけど、すぐに追いつかれてしまったの」






 まず、「犯人が家に入ってから彼女に手をかけるまでは、とても短い時間だった」という透視であるが、すでに
警察の見解でそれはわかっている。侑子ちゃんが帰宅してから発見されるまでは、15〜20分しかなかったのだ。そりゃあ短い時間だったろう。オレでも予想できる。つーか、予想というより、警察の発表そのままだ。
 そして次であるが、「彼女は逃げようとしたけど、すぐに追いつかれてしまったの」。
 ……。
 
だから、もし「彼女は逃げ切れたわ」となっていたら、事件は起こらなかっただろうが。その通りだ。あんたの言う通り、逃げようとしたけど、すぐに追いつかれてしまったんだ。だから事件になってんだよ。

 このあたりでそろそろ
このバアサンはバカだということがわかってきたと思うが、一応彼女の「マダムモンタージュ」たる所以は、犯人の顔をイメージできるというところにある。この後、スタジオに移って、ここでナンシーが透視した犯人の似顔絵を作成するということである。
 尚、ばあさんはあと2つほどコメントを述べていたので、一応ここで証拠として書いておこう。

 ナンシーの透視etc1・・・侑子ちゃんは家の中にいて、(犯人が押した)呼び鈴が鳴ったので玄関のドアを開けた。
 ナンシーの透視etc2・・・ターゲットは最初から侑子ちゃんだった。なぜなら、犯人は侑子ちゃんに好意を持っていた。(ばあさん曰く、「もともと脅すつもりで凶器を持って家に行き、抵抗されたのでついカッとなって刺してしまったのね」)

 このあたりのことは犯人しかわからないことなので、今の段階ではなんとでも言えるだろう。正解かどうかは犯人が逮捕されるまでわからないが、1も2も当てずっぽうで言っても50%くらいの確率で当たりそうな内容だ。これは的中していても全く驚くことではない反面、
外れていたら「ほら外れていた!」と責められるので、ある意味ナンシーも気の毒ではある。

 さて、気分を切り替えよう。はっきり言って、今までのことは
ほんの肩慣らし。ナンシーマイヤーのウリは、昔の部屋のレイアウトを透視することではなく、犯人の詳細な似顔絵を作成するところにあるのだ。ここからが彼女の真骨頂である。彼女はこのためにはるばるアメリカから緊急来日したのである。
 おお……すごい。ナンシーマイヤーは、マダムモンタージュという称号の通り、ズバズバと犯人の特徴を指摘し似顔絵を作り上げている。




ナンシー「鼻は低くて大きい」










ナンシー「眉は太くてとても濃い」









ナンシー「目は大きくて一重」








 
そして出来上がった似顔絵はこれだ。


 いや、これが本当に犯人の似顔絵だとしたら凄いことだ。ここまで細かく犯人の顔をイメージできるというのは、たしかにマダムモンタージュである。ここで似顔絵が公開されたことをきっかけに、なんとしても事件の解決を願いたい。










ナンシー「この男性は犯人ではない」














 ババア?

 何言ってんだ??












ナンシー「まだイメージが錯綜している」







 イメージが錯綜しているらしい。あれやこれや余計なイメージが浮かんで、うまく似顔絵を作成できなかったようだ。しかしナンシーはプロ(相当なギャラを受け取っているだろう)なのだから、しっかり透視してもらわなければ困る。そのためにこのばあさんはいるのだ。






ナレーション「番組では慎重に捜査を進めている(VTR終了)








 VTR終了。





 
……はあ??

 画面上では、既にこのコーナーは終わったことになり、スタジオでのトークに切り替わっている。これで終わりだそうだ。わざわざ侑子ちゃんの家まで押しかけて、お父さんには当時の状況を喋らせ辛い思いをさせ、どっかのバアさんの適当な推理を聞かせて終了だそうだ。

 こんなことが許されるのか?
 「番組では慎重に捜査を進めている」と出たが、捜査なんかしているわけないだろうが。番組スタッフがこの事件の捜査をしているのか? で犯人を見つけるのか?? あり得ない。もうVTRの収録さえ終われば、この事件はナンシーや製作スタッフにとって用無しになるのだから。

 ところで、先の「犯人ではない」似顔絵だが、ナンシーマイヤーによると、あれは目撃者の顔だという。そして、「最善の解決策は、似顔絵の若い男性が、事件当日に見たことを、警察に話すことです」とほざいていた。

 最善の解決策は、
おまえが犯人を見つけることなんじゃねーのか??

 このVTRの最初、ナンシーが空港に到着した時のナレーション


「事件解決のためマダムモンタージュ・ナンシーマイヤーが緊急来日!!」
「事件解決のためマダムモンタージュ・ナンシーマイヤーが緊急来日!!」
「事件解決のためマダムモンタージュ・ナンシーマイヤーが緊急来日!!」
「事件解決のためマダムモンタージュ・ナンシーマイヤーが緊急来日!!」



 事件解決のためマダムモンタージュ・ナンシーマイヤーが緊急来日


 事件解決のために来日したらしいナンシー。こいつは一つでも透視の能力を発揮して何か事件解決に向けた有益な発言をしただろうか? こいつは事件解決に向けてではなく日テレの視聴率アップのために僅かな仕事をしに来日しただけである。
 事件解決に向けては、それこそ
被害者と被害者の家族をおちょくるだけという最低なことしかしていない。本当に呆れるしかないのだが、被害者感情とか、モラルとか、そういうのは関係者には無いのだろうか? 司会のみのもんたを含め。
 もしかしたら、被害者の家族の方は、こんな茶番に付き合うことは心から苦痛に思いながらも、それでも事件を風化させないために敢えて出演を承諾しているのかもしれないが、そうだとしたら悲しすぎる。
 早く犯人が逮捕され、制裁を受けてくれることを願います。死刑でいいんだよ。死刑で。

※他のサイトでナンシーマイヤーの過去の透視の外れまくりについて検証しているところがありますが、マクモニーグル関係と合わせて最後にまとめて紹介します。

 次は、このシリーズでは主役といっていい、今回も登場したマクモニーグルについて。








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