FBI超能力捜査官はアホだ その3



 いつも通り、
家出した普通の人の透視だけは凄い確率で的中させるマクモニーグル。番組スタッフが探し出せそうなレベルの捜索だけは、毎回成功するのである。事件性のあるものの透視について成功したことなど一度も無いくせに……。
 そしてこのインチキに加担するのが、司会者やゲストのタレント達である。毎回出演者は違うが、特に好きなタレントがここに出ているのを見ると、ちょっとがっかりしてしまう。



 司会はみのもんたである。朝ズバではズバッ! と社会や政治の悪を追及、昼には息子夫婦に虐げられている姑さんの相談に乗ったりと、普段は正義の味方のはずなのだが、ここではズバッと悪の片棒を担いでいる。






 先ほどの家出人の捜索成功を見て、角田信朗は「今まで数々の透視してますけど、今回ド真ん中でしたね」と正道会館の師範代らしく熱いコメントをぶつける。
 K−1のレフェリーとして超能力捜査官にも公正な裁定を期待したいものだが、リングを降りれば善悪のジャッジの出来ない人になってしまうようだ。




 山本梓は、「すごかったです、鳥肌立ちましたね」と白々しくこのニセ透視を持ち上げるのだが……

 
かわいいから許す。あずあずはしょうがないんです。きっと悪いプロデューサーに騙されてるんです。




 はい、
というわけで、次は脱北者の透視になるのだが、今回は居場所を探るのではない。実はマクモニーグルが番組の中で以前から、2年越しで何度も透視をして見つからなかった人物(脱北者の家族)がいるのだが、少し前にその人物の居場所が判明したというのだ。尚、その人は透視とかは全く関係なく自分から現れたらしい。で今回番組では、その人物を取材して、以前マクモが行った透視の内容が当たっていたかを検証するということである。

 事の発端というか、最初に番組に捜索の依頼があったのは2年前だそうだ。依頼者自身が北朝鮮から逃げ出したという脱北者(もともとは日本から北朝鮮に渡った日本人)であり、8年前家族みんなで国境を越えて中国へ逃げようとした際、依頼者は娘であるMさんとはぐれてしまったということである。お母さんとMさんの妹さんは無事国境を越え、現在は日本に帰って来ているのだが、長女のMさんとはその時から音信不通であり、そのMさんの捜索をモクマニーグルが担当することになったのである。

 この依頼者母娘は、国境の川を渡って北朝鮮から脱出する際に国境警備隊に見つかり、逃げる途中で娘さん(Mさん)と離れ離れになってしまったということである。
これはまあ見つからないでしょう。透視がうんぬんではなくて、番組スタッフが探し出せる規模を超えていますから。


 さて、2年前にマクモニーグルが描いた透視の結果は、このような地図であった。朝鮮半島である。ここで注目したいのは、赤く書かれている「彼女を感じる街」という部分だ。ここがどうも怪しい。どう怪しいかというと、「彼女を感じる街」という文字の部分と、その右の赤い横長の印なのだが、これはどう見ても後から番組側でつけた印であって、そこには
マクモニーグル自身は何も描いていないのだ。
 ではおっさんが透視した場所はどこかというと、ほら、左上に字がちょこっと見えているではないか。きっと本人が指摘した透視結果の街はその文字の辺り、おそらく最初に捜索した丹東という街なのだろうが(後述)、その辺りに
「彼女を感じる街」というテロップをかぶせてごまかしているのではないですか? まあ、これは過去の放送を見ていないので定かではないですが……。




 ←ちなみに話が前後してしまうが、丹東(たんとん)はここ。マクモニーグルはこの街を最初に透視したわけだ。上の地図の左上の文字の場所とピッタリでしょ?






 その透視の続きであるのだが、マクモニーグルはMさんの近況について、




マクモニーグル「中国から出るためにお金を稼いでいる。家族のいる日本に行くためにお金を貯めている」

 と述べ、





 その後「ここに川があって橋がかかっていて……」とお得意の細かい街の地図を描き出した。





 その結果、第一の捜索場所として挙がったのが、中朝国境地帯の丹東という町なのだ。


 番組スタッフが丹東へ行きウロチョロし、また例によって「透視の結果と同じ形の橋がある!!」などと盛り上げるのだが、脱北者のMさんは見つからず。
捜索は完全な失敗に終わる。
 もちろん、町の全体図や橋の形を描けたからといって凄くもなんともない。例によって、どっかで町の地図や写真を手に入れそれを見ながら描けばいいだけである。中朝国境地帯なんだから情報の入手は難しいなどと思ってはいけない。この丹東という町は
普通の旅行者でも行ける場所なのである。
 旅行者でも、遊覧船に乗って川の真ん中へ繰り出し、北朝鮮の写真を撮れる(川を挟んで向こうが北朝鮮)のだ。なんでこんなことを知っているかというと、私、ついこの間まで、5ヶ月ほど中国をさまよっていたもので(涙)。中国で会った日本人旅行者の大学生カップルが実際に丹東に行っており、彼らからその遊覧船の話は聞いたのである。大体、
地球の歩き方に載っている町だ。その船から川に飛び込んで北朝鮮に亡命した日本人女性もいましたね。

 そもそも
橋を透視するんじゃなくて、失踪者を透視しろ。

 それから何度となく、このFBI超能力捜査官の特番があるごとに、マクモニーグルの透視を元に捜索をかけたそうだが、全て失敗に終わっているという。最初の透視から
2年間、ひとつの手がかりも見つからなかったそうである。









「私の透視は確実にターゲットを見通します。それが100m先だろうともしくは地球の裏側だろうと」

 さっきこんなこと言ってましたね。マクモニーグルさん。





 さて、そんなことをしているうちに、昨年7月、Mさんが
自力で母親に連絡して来たらしい。そして依頼者である母親と長女のMさんは、番組のあずかり知らぬところで自分達だけで再会を果たしたのである。ちなみに、Mさんは中国から韓国へ渡り、そこから母親に連絡をしてきたため「番組を見て家族が自分のことを探しているのに気付いて……」などということは一切ない。つまりマクモニーグルも番組も何の役にも立っていないのである。最初の依頼を受けてから2年間も(断続的にせよ)捜索を続けているというのに。普通の家出人なら1日で見つかるというのに。












「私の透視は確実にターゲットを見通します。それが100m先だろうともしくは地球の裏側だろうと」



 ↑うそつきがいます。



 まあしかし問題はここからである。
 ここで日テレは、Mさんとその母親を呼び出し、最初に行ったマクモニーグルの透視がどれくらい当たっていたかという検証を行おうというのである。正確には、「どれくらい当たっていたか」ではなく
「無理やり当たっていたことにする」ための検証であるのだが。

 さあその検証で登場するのが、最初にマクモニーグルが描いて番組が怪しい小細工をした朝鮮半島の地図である。Mさんが実際に潜伏していた、脱北してからずっと住んでいた場所は、黒竜江省だそうだ。町の名前を言わずに
省までで止めているところにまたも小細工を感じるが、とにかく黒竜江省だそうだ。





 なるほど、ここが黒竜江省ということだが、
これ、明らかにマクモニーグルが予想した場所と違いますよね?? 最初の透視だと、もっと朝鮮半島の付け根くらいに印してたじゃないですか。





 しかし無謀なのか度胸があるのか、このVTR自ら最初の地図と実際の位置を並べて見比べるのだ。


 ↓



ナレーション「まさに、透視どおりの位置関係である」











 
いやいやいやいやいやいや!!!!!!!!!!!!



 
全然違うだろうが!!! そもそも、「Mさんを感じた地域」という赤いとこは番組サイドで無理やり後づけした場所だろう? そんな小細工をやってまで全然違っているというのはどういうことだ。その位置関係で、よくも「まさに、透視どおりの位置関係である」などと言えたもんだ。

 いや、ちょっと待て、そもそも
「透視どおりの位置関係」ならば、なんで最初から黒竜江省を探さなかったんだ? 「透視どおり」と言っているくせに、なんで丹東なんか捜索してるんだよ?? さっきVTRでやってたじゃないか。おっさんは丹東という間違った町を透視したんだよ。1%たりとも透視どおりじゃないんだよ。

 しかも。しかもである。
 上の写真を見ると、まあどう見ても左側と右側の地図の赤い部分は同じ場所だとは言えないわけであるが、それでも
10万歩くらい譲れば「どっちも朝鮮半島の根元近くであると言えなくも無い」という苦しい表現は出来るかもしれない。
 しかし、オレ達は根本的なところで騙されているのだ。それは何かというと、そもそも、左側の地図の黒竜江省の位置が思いっきり間違っている、いや間違っているのではなく、
透視の結果と少しでも近づけるために無理やり位置を操作しているのである。


 見てくれ。実際の黒竜江省の場所は、



 ←この地図で赤く囲まれているところなのである。
 赤丸の下あたりにチーリンとかトゥンホワとかいう都市があるが、その町すらまだ黒竜江省ではないのだ。その2都市は吉林省である(黄色のくねくねした線が省の境界線である)。黒竜江省は、
ロシアと接しているほどの北にある省なのである。








 この地図を、先ほどの番組制作のものと比べてみよう。





ナレーション「まさに、透視どおりの位置関係である」







 どうですか? お客さん。バカでしょう?



 ちなみに本当に最初にマクモニーグルが予想した丹東(本来一番右の地図で指摘されていた場所)は、








 ここです(左下)。


 丹東から、黒竜江省の中で直線距離で一番近いであろうムータンチアンという町までの距離を測ると、約660km。
東京→広島間の距離である。近いとかおしいとか言っている場合ではない。





 今回の検証で番組側としては、先の家出人発見のように、うまくインチキを駆使して透視が成功したことに仕立て、視聴者を欺きたいわけであるが、こうやってキチっと見てみると見事に墓穴を掘っているのがわかる。しかしネットで検索などをしていると、未だにマクモニーグルやナンシーマイヤーのことを疑わない人がいることがなんとも驚きである。ブログなどで素直に「いやー、今回もマクモニーグルは凄かったですねー」などと書いている人を見ると、とりあえず彼らがオレオレ詐欺などに引っかからないか心配になる。疑うことを知らないというのは、
時として他人の迷惑になるものです。

 はい、さて、最初の透視でマクモニーグルは、地図を描いた他にもMさんの状況について、「中国から出るためにお金を稼いでいる。家族のいる日本に行くためにお金を貯めている」と述べた。この件に関して当事者のMさんは、





Mさん「たしかに、金を儲けて貯めていたことも事実です」

 と発言していた。




 本人が言っているのだし、実際に中国から脱出し、こうして来日していることからもわかる、「中国から出るためにお金を稼いでいる。家族のいる日本に行くためにお金を貯めている」という透視は、当たっていたのである!!!!!
 もちろん、
絶対に外れるわけが無い予想である。この透視が外れるというのは、Mさんが「あーあ、家族と離れ離れになっちゃったけどまあいいや。もう会えなくても。お金もいらないや。ここで死のう」と思った場合のみである。そして普通はそう思わない。これは透視というか予言というか、口の上手い占いのようなもんである。

 もう一つ、今度は最初の透視で丹東を捜索したことについて、番組側では
言い訳として被害者のMさんにこんなことを言わせていた。




Mさん「逃げるためにそこ(丹東)に行こうと思ったことがあった」






 
行こうと思ったことがあった(涙)


 そしてすかさずナレーションが!!

ナレーション「透視が行われたのは2004年の秋。ちょうどそのころ、Mさんは丹東に移り住もうとしていたというのだ。
マクモニーグルには、そんなMさんの思いが見えていたのだろうか……」


 VTR終了。スタジオに戻って司会者が発言。


みのもんた「(Mさんが)丹東に行こうと思っている、
その時期を彼(マクモニーグル)はずばり感じていたわけです」






マクモニーグル「透視では、今回のようにターゲットが行きたいと強く願っている場所が鮮明に見えてしまうこともあるのです」



















 ううう……苦しい……苦しくて死ぬ……。




 まずおかしいのが、番組的にもマクモニーグル的にも、最初に透視した場所が丹東だったと認めているところである。実際に捜索しているのだから当たり前だが、
つい1分くらい前に、黒竜江省の地図(ニセ地図だが)とマクモの描いた朝鮮半島地図を並べて、

ナレーション「まさに、透視どおりの位置関係である」


 とやっているのである。つまり、
最初から黒竜江省を透視していたということにさっきはなっていたのだ。それなのに丹東のことを持ち出してしまったら、最初に透視したのは丹東であることを認めるということなので、黒竜江省の件については「透視どおりの位置関係」には全くならないのである。つまり「透視どおりの位置関係である」というコメントと、「ターゲットが強く行きたいと強く願っている場所が鮮明に見えてしまう(今回はそれが見えたのだ)」というコメントは、絶対に並び立たないのである。

 
まあいいや、……そもそも行きたいと願っている場所って!!!! マクモニーグルは失踪者の透視をするのである。失踪者の心を読むのではない。彼には、ターゲットの心の中ではなく失踪者が実際にそこにいる姿が見えるはずなのだ。たとえば、普通我々が日々生きていく中で、「ぼくは今東京都杉並区○○1丁目3番に住んでいま〜す」常に念じながら生きているわけではない。だから、たとえ心を読めたところでその人物の居場所などわからないのだ。ということは、つまり彼はいつも透視する時には心とか関係なくその人間自体を見ているはずではないか。なんで今回に限って「読心術」の能力がいきなり備わっているのか。そして発揮しているのか。しかもいきなり備わった能力なのにスペシャリストであるはずの「透視能力」を上回って発揮されているのだ。今回だけ。

 おそらく、
同じ超能力なんだから別にいいだろうと向こうは思っており、またこっちも思ってしまうのだが、そんなことはないのではないだろうか。
 たとえば、棒高跳びの選手とマラソンランナーは同じ陸上選手であるが、Qちゃんがいきなり棒高跳びに出場して国体で入賞できるか? アメリカからの帰国子女とドイツからの帰国子女はどちらもバイリンガルだが、英語ペラペラのバイリンガルがいきなりドイツ語の通訳を出来るか?? 劇団ひとりとほしのあきはどっちも芸能人だが、劇団ひとりが谷間を強調したらヤングマガジンの巻頭を飾れるか?? ほしのあきが一人コントをやって視聴率が取れるか(これは胸さえあれば意外に取れるかも)??? それと同じように、超能力者とはいえ、読心術と透視と念力と予言は全然別物のはずなのである。
 それに、心の中でチラと思っただけの場所が完璧に透視結果として出てしまうなら、
今後の透視もいくらでも違う場所が出てくる可能性があるということではないか。










「私の透視は確実にターゲットを見通します。それが100m先だろうともしくは地球の裏側だろうと」






 ふーん。






 ちなみに、この日の番組表を見ると、ご覧のように書かれております。





脱北者発見・マクモニーグルが驚異の透視」










 
こらこら。






 さて、これで今回のマクモニーグルの出番は全て終わりである。

 まあ普通の家出人を、超能力で見つけた
ことにして探してあげるのは別にいいのだ。家族が喜べばそれでいい。しかしこの番組の問題点は、その一方でこいつらのおかげで苦しみの上塗りを経験している人がいることである。
 この「普通の人の捜索をとりあえず透視で探し出したことにする」というのは、「教祖が空中浮遊している写真」と同じく、注目を浴びるためのエサである。そうして信用させといて、藁をも掴む思いで彼らにすがって来る、行方不明者や殺人事件の被害者の家族をみんなでいじめるのだ。
 例えば今回ナンシーマイヤーが透視した(してないんだけど)岡山の殺人事件。この透視では、被害者である侑子ちゃんのお父さんが出てきている。ナンシーら関係者はお父さんに対して「侑子ちゃんは、逃げようとしたけどすぐに捕まってしまったの」「犯人が侑子ちゃんに手をかけるまではごく短時間だったわ」などと、娘さんが
殺されるその瞬間の様子、犯行の様子まで想像させるという、深い傷をさらに彫刻刀でえぐるような残酷な行いをしている。もちろんそれが事件解決へ向けたものならばある程度は仕方ないのかもしれないが、実際はまったく逆、期待させておいて全て裏切っているわけだ。

 これは弱いものいじめである。この番組に出演しているタレントは、弱いものいじめに参加している。特に武の道を説く立場である、空手の師範代の角田信朗がいじめる側にまわっているというのが、格闘技ファンとしては非常に情けない。

 繰り返しになってしまうが、この自称超能力者達は普通の家出人の捜索は地球の裏側からでも透視できるくせに、事件性のあるものに関してはひとつの手掛かりも見つけられない。「私の透視は確実にターゲットを見通します」と自信満々に語っているのにもかかわらずだ。もちろん、ある人の居場所を透視できる能力を持っているとしたら、普通の家出人でも、殺人犯でも、誘拐された少女でも、拉致被害者でも、透視の難易度に差などないはずだ。殺人犯だって、
過去に人を殺したことはあるけど今はごく普通に暮らしているはずだ。普通の家出人との違いなどない。大体、イタリアやレバノンで誘拐された人物の詳細な居場所をアメリカにいながらにして言い当てたんだろうこのおっさんは。
 これからは「FBI超能力捜査官」という番組は、単に番組スタッフが生き別れになった家族を探す、「それは秘密です」もしくは「嗚呼!バラ色の珍生!!」の続編として生まれ変わればよい。局も同じだし。というか、もしかして
スタッフは同じですか??

 最後に、この超能力捜査官について同じく検証し疑問を呈している、またはそれに順ずるサイトをいくつか紹介させていただこうと思う。面白いので見てみよう。



AE〜攻撃側全滅さん1
AE〜攻撃側全滅さん2
かじゅちゃん日記さん
phenomenonsさん
教えてgooさん
超常現象の謎さん
フシギの部屋さん



 2時間の番組についてのイチャモンを書くのに、20時間くらいかかりました(涙)。








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