〜ゲレンデがとけるほど濃い死体
※死体ダメな人は読まないでね!





↓本のフリをして書店に陳列される犬



 ペナン島からバスに乗り、行きかう島民の車たちとデッドヒートを繰り広げながら橋を渡ってマレーシア本土へ。いきなり余談だが、このバスはだいたい年間140日くらい島民たちとこのようなレースを行っており、それを地元では
ペナン島レースと呼び、夏の夜には親父がビール片手にテレビ中継に熱を上げるらしい。
 ……
ともかく、国境を越えてタイの町・ハジャイへ。1泊して翌日、タイ鉄道の寝台ではない普通席に乗車し18時間。一睡も出来ずに座りっぱなしで苦痛により脈が消え、一時は昏睡状態まで意識レベルが低下したが、コード・ブルーの発令で召集された緊急医療チームに心肺蘇生を受けてなんとか意識を取り戻し次の日の朝、ようやく到着したのはファランポーン駅である。
 そう、ファランポーン。決してオレは危篤状態に陥った影響で気が触れてふぁらんぽ〜んっ!ぽ〜んぽ〜ん!
乱れ踊って奇声を発しているわけではない。ちゃらんぽらんな雰囲気が漂うこのファランポーン駅だがこの駅こそは、タイの首都、バンコクの玄関口なのである。誰もが知っているであろう、あのバンコク博覧会で有名なバンコクである。古くはバンコクびっくりショーのロケ地となったのもここバンコクだ。
 とダジャレを書いておいて、念の為にGoogleで「バンコク博覧会」「バンコクびっくりショー」を検索してみたら
同じギャグを書いている人間が何万人もいるのが分かりかなり惨めな気持ちになったのはここだけの話である。でも、だからって消さねえぞ。オレは40年前にこのダジャレを思いついたんだ。他の何万人の野郎どもがオレのギャグをパクってやがるんだよっっ!!! オリジナルはオレなんだっっっ!!!!

 市バスに乗って数十分、そこでオレは初めて巡り会った。世界最大のバックパッカーの集結地、カオサンストリート!!!




 ……おそらく、バックパッカーであればカオサンストリートという言葉を聞いたことの無い者はいないだろう。しかし、バックパッカースタイルで旅をするような暇な人間は
一般人100人の中にせいぜい2,3人だろうから、結局カオサンなんて知らないという人の方が断然多いだろう。
 ということで説明しよう。
 カオサンストリート、カオサン通りというのはもちろん通りの名前なのだが、この通りを基準にした周辺地区は外国人旅行者に向けたレストラン、バー、クラブ、旅行会社、土産物屋、屋台に露店にマッサージに無数の安宿とあらゆる物が取り揃えられ、世界中から最も多くバックパッカーが集まる世界一の旅人の安息地なのだ。……ってオレは初めて来たからよく知らないけど、ガイドブックにも書いてあるしみんなそう言っている(そして僕はそれを信じます)。このカオサン地区を目指してあらゆる旅行者が集結するという点では、仮にカオサンを三笠フーズだとすれば、
バックパッカーはさしずめ汚染米だと言うことができるだろう。非常に時事的な上に、不適切な例えである。

 オレは日本人として日本人の習性に従いたむろしようと日本人が集まる宿、カオサントラベラーズロッジにチェックインした。宿泊所は全員日本人。日本食が出る食堂と、マンガ図書館つき。日本人宿らしく、1カ月2カ月は当たり前、中には
半年以上居座っている汚染米、じゃなくて長期旅行者もいる。……ただ今、不適切な発言がありましたことをお詫び申しあげます。
 しかししかし、この宿はだらだらと長期滞在してしまうのもよくわかる、なんとも最強の宿泊環境なのだ。ほんの300円そこらの値段で、ついているのはエアコンに水洗トイレに日本食レストランに日本のマンガに日本人ルームメイト。なんというすさまじい揃い方だろうか。たとえ「母を訪ねて三千里」の旅を始めたばかりの少年でも、途中でこの宿に宿泊したら
母を訪ねることもすっかり忘れて半年以上だらだらと滞在してしまうだろう。
 宿からほんの数10メートルにコンビニやスーパーやネットカフェや各種食堂&屋台が集まっているという利便性も含め、ここまで過ごしやすい宿というのは初めてである。今までの宿、つい先週宿泊していたタマンヌガラの宿などは、日本食やマンガどころか
電気と壁が無かったのである。ルームメイトどころか近くにいたのはせいぜいサソリかヒルである。半径数百kmに渡ってジャングルである。なるほど、あのブンブンヨンについだらだらと長期滞在してしまう旅行者が一人としていないのも納得できる。

 ただ、そうは言ってもオレは誰よりも自分に厳しい職人気質の旅行者だ。NHKの「プロフェッショナル・仕事の流儀」
オレがニート旅行者のプロとして出演した時にも述べたが、観光は旅行者の義務である。旅先で何ヶ月も計画もなく怠慢な日々を過ごすなんていう愚かなことは、それは無職の人間のやることではないか。ちゃんとスケジュールを組んで忙しく観光をすれば、ある程度仕事をしている気分になれるのである。とりあえず何かをやっている気分になれるのである。朝からしっかりプランを立てて、たとえ気が向かなくても自分に鞭打って早起きして観光地に出かけ、1日しっかり汗を流して動いていれば、自分が無職であることなんか忘れてしまえるのだ(じゃあ就職すればいいのに)。
 バンコクではお決まりのワット・ポー、ワット・プラケオ(王宮)、ワット・アルンを回り、日帰りで映画「戦場にかける橋」の舞台となったカンチャナブリ、さらにアユタヤにも足を伸ばしワットヤイチャイモンコン、ワットスワンダーラーラーム、ワットプラマハータート、ワットプラシーサンペット、ワットロカヤスタ、ワットプーカオトーン、ワットラーチャブラーという数々の仏教遺跡をレンタルサイクルで訪れた。

 ……あ〜、
残念! 今の段落、「遺跡名を一つも飛ばさずに読み切った人に100万円プレゼント」のキャンペーンの対象になってたのに!! 残念だけど、チャンスを逃しちゃったよねあなた。だめだよ今から読もうとしても。チャンスは最初の1回限定なんだから。でも今回はダメでも、また同様のキャンペーンが行われることがあるみたいだから、これからは気を付けて読もうね!

 まあ一応画像くらい載せておくと……




↓象
















↓犬を連れた女の子がかわいかったので待ち伏せて激撮したら父親に睨まれた










↓シンナーを吸う犬







 どうでしょう。
歴史ある仏教遺跡の数々を堪能いただけたでしょうか。

 ということで、次はガイドブックからも外されることが多いバンコクの裏観光地、死体博物館に行くことにした。
 この死体博物館、それはそれは多種多様の人間の死体があるいは死んだ時のまま、あるいは見易いように体の一部が切り取られて、あるいは
3枚におろされて、ホルマリンに漬けられてこれでもかこれでもかと陳列されているらしい。老若男女の死体がくまなく集まるこの博物館は、死体界のカオサンストリートと言っても過言ではなかろう。
 もちろん、病院の敷地の中に作られているこの博物館はそもそも医学に従事する人たちが勉強や研究のために訪れる施設であって、ただ本物の死体を見てみたいという好奇心だけで来るような奴は、正直言って最低な人間だと思う。だが、別に言い訳するわけではないが、オレは、
最低な人間なんだ。ああ、本物の死体、見てみたい……(本当に言い訳していない)。

 受付でチケットを買い、研究室のようなこぢんまりとした部屋に入ってみると、いきなり
死体だらけ。それも、ほとんどが赤ん坊や子供の死体である。ところがこれがなぜわざわざ博物館になっているかという点がよくわかったのは、水の中に浮いている子供達が、みんな普通の姿ではないのだ。変形した死体なのである。
 例えばある赤ん坊は、頭が2つついている。いや、2人の赤ん坊が共有して1つの体しか持っていないというべきか。体がひとつで頭が2つだったら、それは1人なのだろうか。それとも2人なのだろうか。
レストランに行って「何名さまですか?」と聞かれたらなんと答えるのだろうか(その前に店員が失神すると思うが)。乗車料金は1人分なのだろうか。お互い結婚することになったら、夫婦生活は……
 やめた。あまりにも気の毒すぎる。世界は残酷で不公平だ。

 にしても、子供だけでなく他にもいろんなものが並んでいるのだが、この無造作ぶりはなんなんだ。
 ほら。




















 足……。

 水にもなんにも浸かって無いけど……。これ、ガラガラっと戸を開ければ簡単に
テイクアウト出来るんじゃないか? フライドチキン感覚で。2本とも取り出して、自分の足の下に装着して靴を履かせれば、持って帰ろうとしても博物館の係員にも気付かれることは無いよな。せいぜい「あれ? あの客あんなに背が高かったっけ?」と疑問に思われるくらいだろう。ユニフォームの中に隠し持って有効に使えば、サッカーの試合でハンドの反則を取られずに済むに違いない。実際ハンドじゃないし。
 ちなみにフライドチキンと言ってふと思ったが、もしニワトリをケンタッキーフライドチキンに連れて行ったら、きっとそれは彼にしてみれば
死体博物館を見物している気分になるんだろうな……。

 そして次の棚の中には、今度は液体に入れられた
腕が2本、下向きでプラーンと……。さらに奥の棚には、半分に切られた人の顔があった。大人の顔が、顔の中心からまっ二つに割られていて、白子のような脳や顔面内部の未知なる部分を断面にさらしながら、左右別々にガラスケースに陳列されているのだ。
 これは、誰なんだろう。
本人の許可を取って展示しているのだろうか。オレもアメリカで盲腸の手術を受けた時には「死んだら臓器提供するか」という同意書を書いたが、さすがに「あなたが死んだら、まず首から上だけを切り取って、さらに切り取った頭部を真ん中からまっ二つに切断して左右別々に液体に浮かせて一般客も見物できる博物館に陳列してもいいですか」と聞かれてOKを出す奴がいるとは思えないのだが。



ぐおおっ





 その他にも、入り口近辺の壁には実物ではないが極めて惨たらしい死に方をした人たちのモザイクなしの死の直後の写真が多数掲示されている。どういう事件だか事故だか知らないがなぜか
体全体が大爆発していたり、ビール瓶の破片で首を一直線に裂かれてパッカーンと首の中身が見えてしまっている人など、ただの好奇心でこれを見ているオレは呪い殺されても文句が言えないと思うくらい、人間は人間という特別なものに見えて実は茶碗や自動車と同じただの物体なのだということを、残酷に理解させられる猟奇的な写真の数々であった。
 オレの大好きな美しいあの人も、ビール瓶で思いきり切りつければこんな酷い物体になってしまうんだろうか。あの人が、命を失い顔だけ半分になって展示されていても、オレはまだ好きでいられるだろうか。その時それをただの気持ち悪い物として見るのならば、今オレはいったい何を好きなんだろう。……いや、オレは彼女が死体になっても愛せる!! 
彼女の体なら食える!!!! 彼女を殺してオレの体の中に入れれば、オレと彼女は永久に一緒にいられるんだ!!!
 …………。
 なんか、今回わたくし微妙にキャラクターが陰惨な感じになっていますが、これはいつもの僕ではありませんので、警察のみなさまどうかこのサイトを見つけても僕に目をつけないでくださいね。普段の僕は決してこんな猟奇思考ではないんです! 本当です! 
今だけです! 今だけたまたま大麻を吸っておかしくなってるだけなんです!! だから決して警察のご厄介になるような人間では無いんです僕はっ!!!
※本気にしちゃヤーよ



















 
うわおおおっっっ!!!!!!


 またあなた、小麦色を通り越して褐色の肌ですな……。それ
どこで焼いたの? すごく自然な仕上がりに見えるけど。プーケット??
 説明文を読んでみると、こいつはレイプ殺人の罪で
死刑になった猟奇殺人者だということだ。他にも並んでいる立ったままのミイラ風死体は、人を殺して食っていた奴や少女を誘拐して殺した奴など、筋金入りの凶悪犯ばかりである。こいつらの体が博物館に管理され、そのせいで何かの研究が少しでも先に進むのならば、おそらくそれは彼らが初めて他人の役に立った瞬間だと言えるだろう。これは、日本の凶悪犯もぜひ同じように死体を展示したらいいと思う。死刑になった後も、未来永劫こうして無様な姿を見せ恥を晒し続けるべきだ。罪も無い人を殺しておいて、死刑が執行されたらその時点で罪は償われたことになるなんてとんでもない話じゃないか?

 まあそれはそうと、オレはこの立ちんぼ死刑囚の足元にある妙なものが気になった。
 それは、こんなものである。

※警告:ここから下は読まないで!!!

























 死体の足の下に備え付けられたトレイ……、そして、そこには何やら、
赤黒い液体が溜まっている。
 これは、
死体から滴る、死体汁である。おそらく体が干からびる過程で、肉やら血やら毛やら体液やらいろいろなものが入り混じった死体汁が搾り出されて猟奇殺人犯の体から垂れてくるのであろう。なんだか、液体の中には正体不明のつぶつぶも浮いている。
 だいたいオレはこういう気持ち悪いものを見てしまうと、どういうわけかもっともっと気持ち悪いことを想像してしまう。例えば、この死体汁を取り出して
そのままご飯にかけて食べるシーンとか……。そしたら自分も死ぬかな。少なくとも物凄い下痢になるだろうな。

 この展示館とは別に、もうひとつ解剖博物館というものが別棟にあり、そこにも大小無数の死体が内臓を見せた状態で並んでいるのだが、なぜかそこにいた客はオレ一人であった。部屋の中にいるのは、
自分以外全員死体。これだけの数がいたら一人くらい起き上がって水の中から出て来そうだなあなどとふと考えると、オレは怖さで青ざめブルーマンになった。でも、オレもあと何年か後にはこれらの仲間……。
 それにしても、ここではとても載せられないがオレは他にも数々のヘンテコな死体をデジカメで激写したため、もしマレーシアより先にここに来ていたら、オレは
「怖さには怖さを!!」と叫びながらジャングルの小屋で真夜中、闇の中で稲川淳二の怪談をBGMにおぞましい死体の生写真をスライドショーで見学する羽目になっていただろう。それはもうさすがに変態というより悪魔の所業である。そうなったら本格的に何か邪悪な力のひとつやふたつ手に入れていたことだろう。オレの知り合いを全員呪える力とか……。少なくとも一人、呪いたい奴がいる。

 ああっ、こんなことをしているうちにまた1日が終わってしまった。さて、ハヤシライスでも食べるか……。






今日の一冊は、石田ゆうすけさんの名作。巻末解説書かせていただきました。 地図を破って行ってやれ! (幻冬舎文庫)






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