〜到着まで〜





病気・感染症について

アフリカを旅行する場合、黄熱病、マラリア、コレラ、チフス、赤痢、A型・B型肝炎、破傷風、狂犬病など、様々な感染症や伝染病になる可能性があります。これらの病気は不衛生な環境や野生動物から感染することが多く、また火を通していない食物や蚊を媒介してウィルスが・・・


バタッ ←見なかったことにしてガイドブックを閉じた音。

・・・。
大丈夫さ!!アフリカには蚊も野生動物もいるわけないさ!!

・・・。
 マレーシアはクアラルンプールでの乗り換え待ち5時間の間に考えていたことは、「マレーシア旅行ってのも結構よくない?またツインタワー見に行きたくない?この前やり残したことがたくさんあるんじゃない??今からでも間に合う!!今がこの旅を『デラックな癒し☆マレー半島と東南アジア北上の旅』に変更する最後のチャンスだ!!!」という、積極的な旅程変更に関する提案だった。
 だが、そのプロジェクトは土俵際の千代大海のように僅かに残っていた自分の中の根性と、マレーシア航空の座席についているスーパーファミコンの誘惑によって却下された。もしもここに着くまでに
ピーチ姫を救出していたら、決して次の飛行機に乗ることはなかっただろう。
 ベンチで一眠りし、次の子クッパを倒すために深夜0時発のケープタウン行きに再び乗り込んだオレは、もはや観念するしかなかった。

 既に日本を発ってから20時間以上。高度1万メートル、目の前の現在地を示すモニタにはアフリカ大陸がアップになっている。
 オレの頭の中のアフリカ大陸は、あくまでもアフリカ大陸の地図だった。まさか人生のうちでアフリカ大陸の地図と自分が重なる瞬間がこようとは、夢にも思わなかった。このまま上空で木っ端微塵にならない限りは、あと数時間で本当にアフリカに着いてしまう。どうでもいいが、この辺りで飛行機事故にあうなら木っ端微塵になった方がましだ。下手にジャングルに不時着して野生動物に狩られたり食人族に平らげられるのは嫌だ。
 もうすぐたどり着く、スタート地点は南アフリカ共和国だ。オレの乏しい知識からのイメージだが、南アフリカは最近アパルトヘイトも無くなり黒人のマンデラ氏が大統領になるなど、平和な国という感じがする。やはり落ち着いた場所から旅を始められるというのは、精神的にも肉体的にもとても良いことだ。こればかりはラッキーだった。
 といってもそれだけの知識では当然旅など出来ないので、オレは昨日南アフリカに関する外務省のホームページを見ていろいろと学習してきた。そこには暮らしの110番も真っ青なこんなお役立ち情報が書かれてあった。


治安について:
「昼間であっても移動には必ず車を利用してください」
「夜間はもちろん、昼間も一人で出歩くことは危険です。複数で行動してください。」
「空港での両替は止めてください。犯罪者に尾行され襲われます
「都市部では犯罪、特に凶悪犯罪の発生率が高く、殺人、強盗、強姦、強盗殺人など時間、場所を問わず発生しています
「犯罪者の向ける銃は本物、十分な実弾が装填されています。犯人はためらわずに引き金を引く用意があります。」
「犯人に襲われれば、できるだけ落ち着き、所持品等には固執せず、命だけを守ることに専念してください










・・・。











戦場?














どんなお役立ち情報やねん!!!
命だけを守ることに専念してください・・・ってそんな旅行者に対するコメントがあるか!!!せめて貞操も守らせろ!!
しかも「襲われる可能性があります」じゃなくて「犯罪者に尾行され
襲われます」・・・。
断定?
 そう、何を隠そう南アフリカ共和国は、知る人ぞ知る、戦争中の国を除いて
世界一治安が悪い国だったのである。中でもヨハネスブルグに関してはコロンビアやペルー等南米の凶悪都市をもごぼう抜きし、中心部を30m歩けば必ず1回は切りつけられるという、極悪同盟のダンプ松本とコンドル斎藤がマナカナに見えてしまうくらい極悪・凶悪・獄悪・超悪な都市なのだ。
 オレは戦地カメラマンでもなんでもない。
 とりあえずヨハネスブルグはなんとしてもこの旅のルートから外すことにした。といってもケープタウンや首都のプレトリアなど、他の街も日本と比べたら800億倍くらい治安は悪いかもしれないが、ヨハネスと比べればまだ郷ひろみと若人あきらくらいの違いはある。
 いっておくがこれはネタふりではないので、何も期待しないで欲しい。もしも刺激を求めてヨハネスの駅前などを本当に闊歩したら、いつの日か「もしもピアノが弾けたなら」を弾き語りできるようになる、というオレのささやかな夢も果たさずに若くして鬼籍に入ることになるだろう。もちろん無事に帰ったとしてもピアノを弾けるようになることは一生無いだろうが。
 とりあえずこの旅最初の目標は、「可能な限りの全力の早さで南アフリカを抜ける」に決定した。こちとらぼったくりや怒鳴り合いには少々慣れているが、撃ち合い・殺し合いは全くの未経験者である。そして
経験者にはなりたくない。移動はとにかくタクシーを使い、宿から一歩も出ないようにし、バスで一気に次の国へ移動する。そうすればせいぜい車輌強盗に注意するくらいで済むだろう。南アフリカに来た意味は全くないが。
 そもそもアフリカなんてこの旅のおまけ中のおまけである。というか
なんで今アフリカに到着しようとしているのかが根本的にわからん。まあ観光なんかパパッとすませて、できれば2週間くらいでアフリカを抜けよう。交通機関を上手く利用すればきっとそのくらいでエジプトまで行けるはず。旅なんか出たくなかったけど、昔からエジプトだけは行きたかったんで、ピラミッドが待っていると思えばアフリカの2週間もきっと耐えられるはずさ。
 そんな素敵な期待に胸膨らんでCカップくらいに成長したオレを乗せた飛行機は、ヨハネスブルグを経由して、いよいよケープタウン国際空港に着陸した。
 外国に来て送迎も現地ガイドも今夜の宿も決まっていないというこの瞬間の心細さというのは、過去何回か味わってきたとはいえ、それがアフリカだという時点で明らかに今回の心細さは
自己最高心細さ記録更新である。





今日の一冊は、死にたくなったら 失踪日記






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